ひとみ


やっぱり………

「なんでしょうか、ひとみさん?」

つい、朝の出来事を思い出してしまったが冷静を装う体で喋る。

『あのさぁ、駿平君、私、暇なんだけど、買い物付き合ってくんない?』

なんだ、そりゃ?

「ひとみさんは暇かもしれないけど、ボクは今、大学にいるんですが」

ボクの言葉の意味を全く受け付けない様子で彼女は言った。

『大学でしょ?サボったって問題ないじゃん。それより、買い物に付き合ってよ。私、まだこの辺のお店とかわかんないし』

アンタは子供か!
知らなきゃ、自分で開拓すればいいだろ!
ボクは喉まででかかった言葉を飲み込んだ。

「家の掃除でもしてたら?ひとみさんの仕事でしょ?」

『そんなのとっくに終わったわよ。それより、夕食の食材の買い物もしたいし、少し街の中を知りたいから付き合ってよ』

なに言っても、無駄な感じがしてきた。

「わかりました。変な食材買われても困るから、今日は付き合いますよ。今、1時か………じゃあ、2時半に駅前に集合でいいですか?」

『オッケ~』

電話の向こうでしたり顔の彼女が想像つくのがしゃくに障るが、我慢することにしよう。

電話を切り、ボクはため息をついた。
ボクはどうしてもっと強気になれないのだろう。
昔からそうだ。
他人のペースに合わせて生きているだけだ。
情けない。

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