ひとみ
「わかりましたよ。ゴキブリはボクが責任もって退治しますから、凶悪犯はひとみさんが担当でお願いします」
ボクの言葉に彼女は鼻からタバコの煙を出しながら大笑いした。
「わかったわ、じゃあ、ゴキブリは駿平君に任せるわ」
「それにしても、ホント、ひとみさん、かっこよかったですよ」
ボクは素直に感じたことを言葉にした。
「でもね、こんなミニスカートで大股広げて足技使っちゃったから、思い返すとちょっと恥ずかしいわ」
そう言って、彼女は豪快にガハハハと笑った。
「じゃあ、もっと大人しい格好すれば?」
これもボクの本心である。
「イヤだ。だってこの格好は駿平君のためにしてるんだもん」
ひとみさんは上目づかいでボクを見た。
ボクはその瞳に思わずドキリとしてしまった。
「じょ、冗談はやめてくださいよ」
「ふふん、冗談じゃないわよ」
そう言って彼女はボクの腕に手を絡めた。
近づいた彼女の顔から、仄かなタバコと化粧の匂いが香る。
「あっ!」
おもむろに彼女は声を上げた。
「今日、せっかく、勝負パンツ履いてのに、駿平君じゃなくて、ひったくり犯に見せちゃった!」
ボクは深々ため息をついた。
きっと、彼女との同居生活が続く限り、ボクの生活は彼女によって振り回され続くのだろう。