ひとみ
「ひとみさん、どうぞ。あっ、ベッド使っていいですから」
ボクは彼女を部屋に招き入れた。
「駿平君はどこで寝るの?」
ひとみさんはジッとボクを見つめながら言った。
罪だよなぁ、この瞳。
ネコみたいにまん丸で、かわいらしく、しかも色っぽい。
「さすがに、同じベッドじゃ寝れないから、ボクは床で寝ますよ」
そう言ってボクは座布団を床に敷いた。
「いいよ、駿平君なら」
ポツリと呟いた彼女の声が聞こえた。
その言葉にドキリとした。
だって、ひとみさんは、ボクの父の、恋人、もしくは、元恋人。
さすがに、マズいよね。
「いいですよ、床で」
ボクは上擦りそうな声を必死にこらえながら言った。
「駿平君。もうひとつ、お願いしていい?」
いつもと違う彼女の声に、ボクの心臓は激しく鼓動を打つ。
「私も、床でいいから、手を握っていてほしいの、隣で」
ひとみさんの表情は真剣だった。
多分、本当に心細いのだろう。
「わかりました。じゃあ、並んで床で寝ましょう」
ベッドの布団を下ろし、さっき並べた座布団の隣に敷いた。
彼女は優しく微笑んだ。
ボクは思わず照れくさくなって言った。
「さっさと寝ましょう」
隣の布団に寝るひとみさんの手を握ったまま、ボクは眠りに就いた。
昼間見せる彼女の顔、そして、今見た彼女の顔。
どちらがホントのひとみさんなんだろう?
そんなことを考えながら…………