ひとみ



お昼の時間も過ぎてしまったが、ボクの運転する車は未だ稲取の辺をノロノロと走っている。
だが、ずっと海岸線を走るこの道は、ひとみさんを上機嫌にさせてくれていた。

「いい景色ねぇ。ドライブきて良かった。ねっ?駿平君」

彼女の言葉に、ボクもコクリと頷いた。
晴れ渡る空の下、水平線まで広がる真っ青な海が続く。
ノンビリと長閑な空気に心が弾む。

「ひとみさん、腹減りませんか?」

ボクの問いに彼女は情けなさそうな表情を浮かべた。

「実は、猛烈に空腹感を感じちゃってるのよねぇ。さすがにキレイな景色だけじゃお腹は膨れないし」

彼女の妙竹林な言い回しに、ボクは思わず口元が緩くなる。

「さっきから『ジャンボエビ天』とかって看板が気になっているようですし、入っちゃいましょうか?」

「おぉ!駿平君、すごい観察眼ねぇ。ぜひぜひ入っちゃってください」

ひとみさんはカラカラ笑いながら言った。
しばらく走ると目的の店が見えてきた。
ボクはハンドルをきり、駐車場に車を停めた。
海から磯の香りが風に乗って漂う。
ボクは運転で疲れた体を、大きく伸ばした。

「運転疲れるでしょ?ここで一休みしておかないとね」

笑顔ではしゃぐように、ひとみさんは言った。
なんか、とても一回りも年上には見えない。

なんか、上手く言えないけど、すごくかわいく見えた。

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