ひとみ
はぁ~
てなわけで、せっかくのボクの20歳の誕生日は、突然やってきた楠木ひとみさんの引っ越しでバタバタになってしまった。
「お~い、駿平君、その荷物はここに持ってきてねぇ~」
荷物運びは男の仕事と勝手に決めつけて、彼女はボクにアレコレと指示をだす。
近所のショッピングモールでたんまり買い込んできたのは、やれ鏡台やら、やれ衣装ケースやら、なんやかんや嵩のはるものばかりだ。
それらの運搬から配置まで全てボクひとりにやらせて、自分はビール片手に口ばかりと。
最悪だよ。
「ありがとねぇ、駿平君」
あまり有り難がっていなそうな口調で彼女は礼を言った。
「あっ、そうだ。駿平君、私の歓迎会開いてよ。せっかくの新生活のスタートだしさ」
厚かましいことこの上ない。
いったい、どういう教育を受けたらこんな人格が出来上がるのだろうか。
「あ、あの、く、楠木さん、歓迎会もいいですけど、今日、ボクの誕生日なんですけど」
ささやかな抵抗でもないが、誕生日のことを訴えてみた。
「あらぁ、そうなの?それなら、駿平君の誕生日祝い兼、私の歓迎会になるわね。思いっきり盛大にしなきゃ!」
はぁ~、どうあっても自分の歓迎会はするわけなんですね。