ひとみ



ボクは学校に行く気も起こらず、暗くなるまで河川敷で川の流れを眺めていた。
時折、吹き付ける北風には閉口したが、自分の中のウジウジとした考えを消し去ってくれるのには役立った。

家に戻ると、父がボクに話し掛けてきた。

「なぁ、駿平。俺達は明日2時の飛行機で帰るけど、見送りは来てくれるのか?」

正直、その言葉はグサリとボクの心に突き刺さる。

「ごめん、明日は休めない講義があるから」

見送りなんて、行けないよ。

「そうか、それは残念だな。まぁ、またいつでも会えるしな」

サバサバとした父の口調は、ボクの気持ちを汲んでくれたものなのであろう。
それだけ、言葉を交わして、ボクは部屋へ引きこもった。
夕食に呼ぶ父の声が聞こえたが、済ましてきたから、とひと言、断りを入れた。
父も色々察してはくれているらしく、しつこく誘うこともせず、そのまま引き下がっていった。

なんだか、ボク、まるで拗ねた子供みたいだよなぁ。
改めて思う、自分の姿にため息が漏れる。
でも、仕方ない、無理に平静を装える程、ボクは大人じゃないのだから。


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