おまえのこと、待ってる。

おまえのこと、待ってる。

一人きりのオフィスって、すごく淋しい。

っていうか――ちょっと怖いよっっ。

だって、経費削減で照明も暖房もケチケチだし。

フロアの半分以上は真っ暗で、かろうじて明かりがついているのは、私のデスクがある島（？）の辺りだけ……。

そりゃあ、残業になったのは自分のせいですよ？　

見通しが甘くて段取りの悪い私のせい。

でも、なんか辛いよ……。

「あーもうっ、暗いよー、寒いよー、ひもじいよー」

「ったく。なんでおまえは、いつもそう要領が悪ぃんだよ」

「ええっ！？」

独りぼっちで嘆き悲しむ私のまえに現れたのは、スマートなスーツ姿の“彼”だった。

「な、なんであなたがここに……！？」

「んなことはどうでもいい。それより、まーた独りで残業か？」

彼は呆れながらそう言うと、隣の席にどっかと座って脚を組んだ。

机に頬杖をついて私をじっと見つめる彼。

決して責めてるわけじゃない。なんとなくそれはわかる。

けど……返す言葉が見つからない。

「おまえなぁ、お人よしにもほどがあるぞ。この課の勤怠管理はおまえ一人でやってんだろ？　その締めだってあるのに、よその仕事手伝ってる場合じゃねえじゃん」

「だって……」

彼の言うとおり。私は優柔不断で皆にいい顔をして、頼まれると嫌と言えず断れない。

そして結局いつだって、こんなふうに自分で自分の首をしめてしまう。

何度も同じことを繰り返している私って……。

私なんて――。

「どうせバカだもん……」

自分でもわかってるよ、そんなこと。私だって嫌だもん、こんな自分。

でも、だって――。

「しょうがないじゃないっ」

私はうつむいて唇をかみしめながら、零れ落ちそうになる涙を必死で我慢した。

「おまえってさ――」

少し低めで、クールでどこか色っぽい声。私の好きな声だ。

だけど、今はこれ以上聞きたくない。

何も言わないで。私を、追い詰めないで……。