+Shriek+
錙銖の残心

夕日が沈む
そして また

「残すのか」

しんしん濡れる赤い水溜まり
何故そんなにも鮮やかに
散る白き無数の羽根
何故其処まで華麗に
秘かな問い 響く

「何故今更」

悲しみに映る夕日 赤々しく燃え滴る紅
愛しき者を優しく包み込んだ
しかし 時既に(遅し)

はらはらゆらゆら
黒輪広げ くしゃり嗤う
ごくり泪飲み干し
御前が阿弥陀ゆく前に(呟く)

「やはり」
「さぞ似よる」
「御前に」

煌びやかに天と心 支配し
我が背と重なる景色
朧気に散りゆく赤い太陽の記憶

はらはらゆらゆら
残った想い 重くやむ
燐火と共に消化
やはり 我置いて(去る)

唇に指通わせ 一つ接吻
瞳は閉ざされたまま 永遠に
こうなると解かっていた
それなのに あまりにも悲しい

さらさら水溜まりは
辺りを血に染めてゆく
御前色に染めてゆく

「おやすみ」

はらはらゆらゆら
言葉 沈む
忘れたくない温度
狐色の霧に抱かれて
空笑い浮べ紛らす
情と静を表す女郎花
とても汚い色

夕日が沈む
嗚呼 霄は赤を忘れた


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