その一言を聞きたくて
家で漫画を読んでいると一本の電話が鳴り響いた。
その数分後、母が慌てて部屋に入ってきた。

大輔くんが…事故に遭ったって…。

その母の一言に最初は信じられなかったが、母が流す涙を見て、真実であると確信した。
急いで家を飛び出し病院に駆け込む。
しかし、そこで待っていたのは変わり果てた大輔の姿だった。

嘘だろ…?

傷だらけの身体。
触れた身体は冷え切っていた。

現実を目の当たりにしても友樹はまだ信じられなかった。
さっきまで一緒に帰宅していたのに…。
友樹の瞳から涙が溢れ出した。
その日は一睡も出来なかった。

数日後、大輔の葬儀が行われた。
葬式の最中、友樹の頭にあの日の出来事が蘇ってきた。

結局、あの日あいつは何を言おうとしていたんだ?

いくら考えても答えは見つからない。
当の本人も今では言葉を発することはない。
友樹の頭の中に、解けない謎が残った。




あれから十年、友樹は社会人となった。
しかし、謎は未だ解けないままだった。

俺、あの日の事が頭からずっと離れないんだよ。
いったい何を言おうとしていたんだ、お前は。

花束に話しかけても答えが返ってくるはずもなく、友樹はため息を一つついた。
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