その一言を聞きたくて
友樹は力一杯走った。
大輔が向かっているのはあの交差点で間違いない。
過去のあの日であるならば、今ならば、悲しい過去を変える事ができる。
そう信じて。


走り始めてから数分、交差点の少し手前で俯きながら歩いている大輔を発見した。
友樹はありったけの空気を吸い込んだ。



大輔!!!


できる限りの大きな声で叫んだ。
周りの目を気にすることもなく、全力で。
その声に反応した大輔が驚きながら振り返る。

立ち止まってくれた。よかった。

友樹はホッと肩を撫でおろした。
突然の出来事に呆然としている大輔。
友樹はその肩に手をやると、安堵した顔で大輔を見つめた。

えっ?
どうしたの、急に?

状況が理解できていない大輔。
だが、友樹の心は達成感で満たされていた。

よかった。助ける事が出来た。
勇気を出して追いかけてよかった。
ただそれだけであった。

あ、いや。
その話はまた今度聞くからさ、今日は一緒に帰らないか?

友樹がそう言うと大輔は笑顔でうなずいた。

過去を変えてしまったという気持ちもあったが、それでも友樹は自分がした行動に後悔はしていなかった。

そして、いつもの様に仲良く帰宅するのであった。
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