ネイルカラー
家、この辺?
いや、今日、引っ越してきたんですよ
そうなんだ
えぇ
聞きながらマンションの玄関前に停まっていた1台の引越しトラックを思い出す
暫くの沈黙の後カルボナーラとステーキセットが時間差で運ばれて来た
黙々と食べ終えるとひと休みし席を立った
ふたりの間に妙な静かな空気が流れている
レジで私の分も払ってくれた彼に店外に出たところで野口を1枚差し出した
いや、いいですよ
彼氏でもない人に奢ってもらう覚えないから
そう言うと渋々彼は受け取った
ふたり同じ方向に歩き始めどちらともなく手を繋いだ
大きて温かい包み込むような手
もう、後ろから足音はしなかった