ネイルカラー




家、この辺?

いや、今日、引っ越してきたんですよ

そうなんだ

えぇ


聞きながらマンションの玄関前に停まっていた1台の引越しトラックを思い出す


暫くの沈黙の後カルボナーラとステーキセットが時間差で運ばれて来た


黙々と食べ終えるとひと休みし席を立った

ふたりの間に妙な静かな空気が流れている
レジで私の分も払ってくれた彼に店外に出たところで野口を1枚差し出した


いや、いいですよ

彼氏でもない人に奢ってもらう覚えないから

そう言うと渋々彼は受け取った


ふたり同じ方向に歩き始めどちらともなく手を繋いだ

大きて温かい包み込むような手


もう、後ろから足音はしなかった



< 4 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop