ネイルカラー
マンションの前まで来ると手を離したのは彼からだった
じゃあこの辺で
背を向ける彼
呼び止めようと口を開きかけてやめた
暗闇の向こうから走ってくる小さな影
その正体が電灯の下に照らされて明らかになる
彼の名を呼ぶその声は
彼の手をとるその仕草は
彼のいちばんであると周囲に見せつけるようだった
なぁんだ
やっぱり私は6位の女
バーガンディーのネイルカラー
心の奥底で芽生えかけていた何かが弾ける音がした
【完】