溺れるマーメード
部屋中に霧が舞う。
白い霧が彼を包み
アロマの香りが部屋を癒す。
ガチャガチャと扉を回す音が響き
私は身なりを整え
扉を開けると社長が立っていた。
「鍵なんかして、水谷さんどうしたの?」
消臭剤を片手にスプレーしまくる私を見て、社長は不思議そうな顔をする。
「午前中のお客さん。煙草を吸われたのでお部屋を消臭してました」
「そっか。ありがとう。いや父の代を知るお客さんにとっては、この社長室は普通に喫煙だったからね、その名残でつい吸うんだろう。灰皿を置いてるのが悪いのかな」
「かもしれませんね」
「よく机の下にあるのがわかったね。僕は禁煙派だから助かるよ。ありがとう」
社長は笑顔で自分の席に戻り
私も消臭剤を社長に戻し『失礼します』と部屋を出る。
あぶない。あぶない。
予定より早く帰って来たんだね社長。
ヨダレ垂らした昼寝を見つからなくてよかった。
先に横になっていた新人のおかげかな。
先輩として注意しなきゃダメかしら
でもあの場所は昼寝に最適なんだよね。
あの沈み具合が何ともいえなくて
高級ベッドに負けないと思う。
5分だけでも横になると違うんだよねー
一瞬の眠りが疲れをとってくれるから。
家に欲しいなぁ
でも外国製だし高いし買えないし。
やっぱり
こっそりお昼寝が
丁度いいかもしれないね。
さて
午後からも頑張ろう。
◇◇◇ 擬人化 社長室のソファ ◇◇◇