-ハナムケ-
-ハナムケ-


終業後のオフィスはやけに静か。

冷めたコーヒーをゆっくりと飲みながら、私は卓上カレンダーを見つめてる。

視線の先にあるのはピンクの花丸に囲まれた、明々後日の日付け。


「そんなに楽しみなのか?」


彼の声でハッとして、


「それは……そうだけど」


そう少し低いトーンで言葉を返し、その日付から目をそらした。

今の自分、カレンダーに記されたマークのテンションとは真逆。

そんな自覚もある。それに、


「何だよ、その表情。本当は沈んでるんじゃねーの?」


彼も私の一瞬の表情の変化と、薄く曇りがかった心も見逃していなかった。

でも、


「まさか」


ここに来て後戻りなんて出来ない。

それに、現に既にオフィスの外では沢山の変化を済ませた。

だから、


「私は今とっても幸せなの。大体、沈んでるのはそっちじゃないの?」


仕返しとばかりに、意地悪く言い返してしまう。


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