-ハナムケ-

やりきれなくなって、デスクの引き出しから総務部から届いたA4サイズの封筒を取り出すけど―…


「しっかり準備は出来てんじゃん」


その中身を察した彼の口調は冷たくて、この間を繋げる行動にはなってくれなかった。

むしろ逆効果。

でも、それは、

当たり前だよね……

彼がムッとしてしまうのも仕方ない。

だって、次に出社する時は、私はこの封筒の中に入ってるネームプレートや社員証を身に着けてる。

それが意味することは、

デスクの上で真っすぐに立ち、私をじっと見つめる彼との別れ。

何時もはダラしくその辺に転がってる癖に、今日はしゃんとしていて、やけに存在感もある。


「私……明日から暫く特別休暇だから……」

「そんなのわかってるよ。明々後日は待ちに待った日だもんな」

「うん―…」

「だから何だよ、その靄がかかった返しは」

「……」


〝何だよ”

って、私だってわかんない。

悲しいわけでも、辛いわけでもない。けど、だからと言って単純に大喜び出来るわけでもない。

書類に落ちて出来たコーヒーのシミみたいに、じんわりと広がってる正しく分類出来ない感情。


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