ごくまれな事なので、ついでに奇跡も起きたらいいのに
緊張感から解放された途端に、カァァと一気に顔が熱を帯びる。

「瀬山さんて呼ばれた。それに、いつものレモンティーって……夢?奇跡?」

香奈はレモンティーを見つめながらぎゅっと握りしめて、頭の中で三浦の言葉一つ一つをリピートした。

三浦が自分を認識してくれていることが分かっただけでも満足なのに、三浦は自分がいつもレモンティーを飲んでいることまで分かってくれていた。


キャップを開けて、ゆっくりとレモンティーを口に流し込むと、いつもより甘い気がした。


「やばい。仕事頑張ろう」

香奈はそう呟いてから立ち上がり、足取り軽く自席へと戻っていった。

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