ごくまれな事なので、ついでに奇跡も起きたらいいのに
「だって何話せばいいか分かんないし、話しかけられても迷惑かもしれないし、そもそも私の名前だって知らないかもしれないし……」


香奈と三浦は違うフロアのため、ほとんど接点はない。
おまけに、三浦は企画部のエースと社内でも期待されている人物だし、爽やかな外見は女性社員たちから定評があった。

だから香奈は、自分は三浦に相手にされるはずがない、三浦に話しかけても意味がないことなのだと、話しかけられない度に自分に言い聞かせてきた。


ぐいっとレモンティーを口に注いだ香奈に、やれやれと今度は彼がため息を吐いた。

そして、また優しく微笑んだ。

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