夢が醒めなくて
「竹原さま。こちらでございます。」
職員さんが、ビロードの台に細いネックレスをいっぱい並べて持ってきてくれた。
中には、希和のご希望の琥珀も、濃淡取り混ぜて幾種類か並んでいた。

「ちっさ。琥珀って、でっかいのをペンダントにしたりブローチや指輪にするもんやと思ってた。」
そうぼやくと、職員さんは少し笑った。

「竹原の奥様でしたらそちらをお勧めしますが、お嬢様には仰々しいかと。」
なるほど、そんなものか。

小さな琥珀を繋げたネックレスを幾つも手にかけて、希和は色の違いと中に含まれた葉っぱに見入っていた。

「地味ですね。」
職員さんにそう言うと、待ってました!とばかりに金のチェーンネックを見せてきた。

「こちらと重ね付けしていただきますと、適度なアクセントになるかと存じます。ピンクの真珠にも、ラピスにも、珊瑚にも合いますし……」

待て待て待て。
増えてるぞ。
……と、一瞬思ったけれど……まあ、いいか。
琥珀も瑠璃も珊瑚もハッキリした色だから、服に合わせてコーディネートすると考えれば。

「でも金で傷ついてしまいませんか?特に真珠……」
心配そうに首元のピンクの真珠に触れた希和に、職員さんは笑顔を向けた。

「でしたら18金ではなくこちらの24金は如何でしょう?純度が高い分やわらかいので、傷つけることもないと思います。」

……なるほど。
24金は、18金よりさらに濃い金色に輝いていた。

「キラキラというよりギラギラですね。」
希和はちょっと引いてるようだ。

すると、職員さんは、より細い華奢なチェーンを出して見せてくれた。
引っ張ったら千切れそうだな。
でも普段使いにするなら、それぐらいのほうがいいかもしれない。

「これ、いいですね。」
存在感があり頑丈そうだけど、フォルムは細い一本を手に取った。

「ベネチアンチェーンですね。」
職員さんの言葉に希和が反応した。
ベネチアにはいい印象を抱いているらしいな。

「ほんと。これだけで付けても素敵。」
希和はそうつぶやいてから、俺を見た。
「ううん。これだけでいいです。このチェーンをお願いしていいですか?」

チェーンだけ……。
「じゃあ、学校にはチェーンだけ付けてくってことで。これと、これと、これもついでに。」

ぷるぷる首を横に振る希和を無視して、24金の細いベネチアンチェーンと共に、小さな粒をつなげたネックレスを3本包んでもらった。

赤珊瑚と、瑠璃と、琥珀。
……赤、青、黄色、だな。
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