夢が醒めなくて
初めての金泉を独りで入るのは、少し淋しい気がした。
もちろん義人氏と入るわけにはいかないけど、せめてお母さんと一緒がよかったな。
赤茶けたお湯がじんじんと身体に浸透してく。
気持ちいいけど……お湯のトポトポと流れる音が響いて……なぜか涙が出た。
「希和~?」
不意に、間延びした義人氏の声が響いてきた。
仕切りの向こうにいるんだ。
「……はい。」
泣いたことがばれないように、取りすまして小声で返事した。
でも、バレバレだったみたい。
「そっちも独りやろ?大丈夫か~?」
「……うん。……ちょっと……」
淋しかった、とはさすがに言えなかった。
「静かですね。」
そう言ったら、義人氏は急に歌い出した。
確か、IDEA(イデア)の古い曲だ。
義人氏の歌を聞くのは初めてかな。
当たり前のように、上手かった。
低い甘い声で、優しいラブソングなんか歌わんといてほしい。
涙は止まったし、淋しくなくなったけど……どんな顔で歌ってるんだろうって……姿を見たくなった。
裸が見たいわけじゃないけどね!
施設にいた頃は、独りになりたかった。
でも、今は、なるべく家族といたい。
義人氏に甘やかされて、お母さんに優しくしてもらって、お父さんに愛されて……私は、弱くなったのかもしれない。
いつも、そばにいてほしい。
自分の変化に驚くと同時に、怖くなった。
お風呂上がりの義人氏なんて、たぶん何度も見てるはずなのに、浴衣ってだけで別人みたいに感じた。
濡れた髪も、鎖骨も、筋張った腕も……目の毒だわ。
「……かわいいわ。よぉ似合ってる。」
照れくさそうに、そんなこと言うって、何かもう、ひどい!
恥ずかしくて、鼓動がうるさくて、息をするのを忘れそうになる。
ずるいわ。
お部屋に戻ると、お父さんとお母さんは寄り添うように隣に座ってらした。
仲直りしてはるみたい。
「犬も食わん、やろ。」
耳許でそう囁いた義人氏の声と吐息に、背筋がゾクッとした。
旅館のお食事は、めちゃめちゃ美味しかった。
明石からの海の幸をふんだんに使った懐石は京都のお料理とはまた違う趣があった。
基本的には和食だけど、メインはどーんと神戸牛だったことにも驚いた。
「もう、無理。苦しい。美味しいのに、食べられない。」
途中でギブアップした私をあざ笑うかのように、デザートはワゴンで幾種類ものケーキが運ばれてきた。
「一口ずつでもおあがりください。」
と仲居さんはおっしゃったけど……とても無理です。
結局、義人氏のケーキを、本当に一口ずつ味見させてもらって、ダウンした。
お腹苦しすぎる~~~。
もちろん義人氏と入るわけにはいかないけど、せめてお母さんと一緒がよかったな。
赤茶けたお湯がじんじんと身体に浸透してく。
気持ちいいけど……お湯のトポトポと流れる音が響いて……なぜか涙が出た。
「希和~?」
不意に、間延びした義人氏の声が響いてきた。
仕切りの向こうにいるんだ。
「……はい。」
泣いたことがばれないように、取りすまして小声で返事した。
でも、バレバレだったみたい。
「そっちも独りやろ?大丈夫か~?」
「……うん。……ちょっと……」
淋しかった、とはさすがに言えなかった。
「静かですね。」
そう言ったら、義人氏は急に歌い出した。
確か、IDEA(イデア)の古い曲だ。
義人氏の歌を聞くのは初めてかな。
当たり前のように、上手かった。
低い甘い声で、優しいラブソングなんか歌わんといてほしい。
涙は止まったし、淋しくなくなったけど……どんな顔で歌ってるんだろうって……姿を見たくなった。
裸が見たいわけじゃないけどね!
施設にいた頃は、独りになりたかった。
でも、今は、なるべく家族といたい。
義人氏に甘やかされて、お母さんに優しくしてもらって、お父さんに愛されて……私は、弱くなったのかもしれない。
いつも、そばにいてほしい。
自分の変化に驚くと同時に、怖くなった。
お風呂上がりの義人氏なんて、たぶん何度も見てるはずなのに、浴衣ってだけで別人みたいに感じた。
濡れた髪も、鎖骨も、筋張った腕も……目の毒だわ。
「……かわいいわ。よぉ似合ってる。」
照れくさそうに、そんなこと言うって、何かもう、ひどい!
恥ずかしくて、鼓動がうるさくて、息をするのを忘れそうになる。
ずるいわ。
お部屋に戻ると、お父さんとお母さんは寄り添うように隣に座ってらした。
仲直りしてはるみたい。
「犬も食わん、やろ。」
耳許でそう囁いた義人氏の声と吐息に、背筋がゾクッとした。
旅館のお食事は、めちゃめちゃ美味しかった。
明石からの海の幸をふんだんに使った懐石は京都のお料理とはまた違う趣があった。
基本的には和食だけど、メインはどーんと神戸牛だったことにも驚いた。
「もう、無理。苦しい。美味しいのに、食べられない。」
途中でギブアップした私をあざ笑うかのように、デザートはワゴンで幾種類ものケーキが運ばれてきた。
「一口ずつでもおあがりください。」
と仲居さんはおっしゃったけど……とても無理です。
結局、義人氏のケーキを、本当に一口ずつ味見させてもらって、ダウンした。
お腹苦しすぎる~~~。