夢が醒めなくて
「先輩にも同級生にも後輩にもいたで。あちこちの家元の息子。せやし、よりどりみどりやねんけどな。決め手に欠けるというか。」
義人氏はそんな風に言った。
「ふーん。何でも即断即決の義人くんがねえ。希和子ちゃん、大事にされてはるんやね。」
明子さんにそう指摘されて、珍しく義人氏は照れてるように見えた。
……長い付き合いみたいだけど、やらしい関係じゃない女友達もいるんだ。
まあ、親友の彼女は対象外なのかもしれないけれど、気心の知れたやりとりがちょっと新鮮に感じられた。
途中で他のお友達や先月紹介された外国の王子様のようなセルジュさんとも合流したけど、みなさん久しぶりの邂逅らしくほほえましくはしゃいでらした。
準備してくださったお席は、最前列だった。
けど、隣は義人氏だし、まあ、いいか……そう思ってたら、反対側のお隣さんは背の高い綺麗な外国人男性だった。
驚いたけど、外国人さんは目を輝かせて赤い着物の私を褒めてくれた。
「カワイイ。」
と、日本語で。
幕が上がると、舞台には艶やかな女性たちが既にいて、三味線の音で華やかに舞い始めた。
言葉が聞き取れたらもっと楽しいんだろうな。
癖の強い独特な節回しは、私には難しかった。
……隣の外国人はもっとつまんないだろうと思ってたけど、意外に楽しそうに熱心に見てらした。
幕間(まくあい)に聞いたところ、この外国人のテオさんは元ダンサーの振付家さんらしい。
たぶん見るとこが違うんだろな、と理解した。
そして、最後に義人氏の親友が舞う。
日本舞踊の次期家元の彩乃さんは、今回は男の人の役をしていたけれど、確かに美女に化けそうな色気がだだ漏れだった。
……遅れて、本物の女性が登場した。
瞬間、隣のテオさんが声を挙げて立ち上がった!
ダメだって!
思わず、袖を引っ張って座らせた。
テオさんは赤くなって何か口の中でつぶやいていた。
あー、びっくりした。
いや、気持ちはわかるような気がするけどね。
恋人の舞台を観るためだけに、わざわざニューヨークから強行スケジュールで来たというテオさん。
感極まって両手を握って涙目で観てはるのは、すらっと背の高い凛とした美人さん。
もともとバレリーナだったと聞いて、何かものすごく納得だった。
終演後、みんなでワイワイと楽屋へ押しかけた。
化粧を落とした彩乃さんは普通にかっこいい男性だった。
……義人氏、舞台で女装の彩乃さんに一目惚れして、楽屋を訪ねて恋が終わったって言ってたけど……うん、男だな。
当時の義人氏の衝撃が想像できて笑えた。
義人氏はそんな風に言った。
「ふーん。何でも即断即決の義人くんがねえ。希和子ちゃん、大事にされてはるんやね。」
明子さんにそう指摘されて、珍しく義人氏は照れてるように見えた。
……長い付き合いみたいだけど、やらしい関係じゃない女友達もいるんだ。
まあ、親友の彼女は対象外なのかもしれないけれど、気心の知れたやりとりがちょっと新鮮に感じられた。
途中で他のお友達や先月紹介された外国の王子様のようなセルジュさんとも合流したけど、みなさん久しぶりの邂逅らしくほほえましくはしゃいでらした。
準備してくださったお席は、最前列だった。
けど、隣は義人氏だし、まあ、いいか……そう思ってたら、反対側のお隣さんは背の高い綺麗な外国人男性だった。
驚いたけど、外国人さんは目を輝かせて赤い着物の私を褒めてくれた。
「カワイイ。」
と、日本語で。
幕が上がると、舞台には艶やかな女性たちが既にいて、三味線の音で華やかに舞い始めた。
言葉が聞き取れたらもっと楽しいんだろうな。
癖の強い独特な節回しは、私には難しかった。
……隣の外国人はもっとつまんないだろうと思ってたけど、意外に楽しそうに熱心に見てらした。
幕間(まくあい)に聞いたところ、この外国人のテオさんは元ダンサーの振付家さんらしい。
たぶん見るとこが違うんだろな、と理解した。
そして、最後に義人氏の親友が舞う。
日本舞踊の次期家元の彩乃さんは、今回は男の人の役をしていたけれど、確かに美女に化けそうな色気がだだ漏れだった。
……遅れて、本物の女性が登場した。
瞬間、隣のテオさんが声を挙げて立ち上がった!
ダメだって!
思わず、袖を引っ張って座らせた。
テオさんは赤くなって何か口の中でつぶやいていた。
あー、びっくりした。
いや、気持ちはわかるような気がするけどね。
恋人の舞台を観るためだけに、わざわざニューヨークから強行スケジュールで来たというテオさん。
感極まって両手を握って涙目で観てはるのは、すらっと背の高い凛とした美人さん。
もともとバレリーナだったと聞いて、何かものすごく納得だった。
終演後、みんなでワイワイと楽屋へ押しかけた。
化粧を落とした彩乃さんは普通にかっこいい男性だった。
……義人氏、舞台で女装の彩乃さんに一目惚れして、楽屋を訪ねて恋が終わったって言ってたけど……うん、男だな。
当時の義人氏の衝撃が想像できて笑えた。