夢が醒めなくて
……大丈夫だと思ってたのに……下駄箱の近くで突然、足がすくんだ。
身体が小刻みに震え出す。
どうしよう。
指先がどんどん冷たくなってきて、心臓がバクバクしてきて……喉の奥がひゅうっと変な音を出した。
ダメだ……。
私はじりじりと後ずさりした。
「おはよう。希和子ちゃん。」
背後から声をかけたのは、朝秀くんだった。
「あ……」
声が出ない。
朝秀くんの隣を歩いていた坂巻くんが小さな舌打ちをした。
「またか。竹原。携帯貸せ。」
驚いてる朝秀くんに私の鞄を持たせると、坂巻くんは携帯の履歴から義人氏に電話をかけた。
「坂巻です。竹原が怖がってます。」
簡潔にそう言うと、私の耳に携帯を押し付けた。
『坂巻くん!?どこ!?』
慌てる義人氏の声に、どっと体中の血が巡り、感情が声と涙になって流れ出した。
「ごめん……ダメみたい……」
『希和ッ!』
助けて。
お願い、早く来て。
そばにいて。
ボロボロと涙がこぼれた。
「春秋(はるあき)。俺の鞄も持って。」
坂巻くんは自分の鞄も朝秀くんに押し付けると、有無を言わさず私を肩に担ぎ上げた。
嘘っ!
びっくりしてジタバタしてると、
「孝義!荷物じゃないんやから!」
と、朝秀くんが言ってくれた。
そうだそうだ!
「このほうが早いのに。」
坂巻くんはそうぼやいて、私を下ろすと、すかさず、今度はお姫さま抱っこをした。
ひやーっ!
小柄なのに筋肉質でたくましい坂巻くんは、私を抱き上げたまま走り出した。
「どこ行くねーん!保健室ちゃうんか!?」
3人分の鞄を持った朝秀くんが追いかけてくる。
「いいから来い!」
坂巻くんは、登校してくる生徒の流れに逆らって、ぶつからないように走った。
「めっちゃ見られてる……恥ずかしい……」
泣きながらそう言うと
『目ぇつぶっとき。すぐ行くから。』
と受話器の向こうから義人氏が力強く言ってくれた。
……電話、まだ繋がってたんだ。
また新たな涙がこみ上げた。
ほぼ同時に坂巻くんが
「目ぇつぶっとき。非常事態や。」
と、言ってくれて、ステレオ効果で、私はギュッと目をつぶった。
涙がこめかみを伝って流れ落ちた。
「希和っ!」
義人氏の声に、パッと目を開ける。
人混みをかき分けて、義人氏が現れた。
声にならない声とともに、私は両手を、身体ごと、義人氏のほうへと伸ばす。
「おおおおっ。危ないって。」
すぐに坂巻くんは私を下ろしてくれた。
身体が小刻みに震え出す。
どうしよう。
指先がどんどん冷たくなってきて、心臓がバクバクしてきて……喉の奥がひゅうっと変な音を出した。
ダメだ……。
私はじりじりと後ずさりした。
「おはよう。希和子ちゃん。」
背後から声をかけたのは、朝秀くんだった。
「あ……」
声が出ない。
朝秀くんの隣を歩いていた坂巻くんが小さな舌打ちをした。
「またか。竹原。携帯貸せ。」
驚いてる朝秀くんに私の鞄を持たせると、坂巻くんは携帯の履歴から義人氏に電話をかけた。
「坂巻です。竹原が怖がってます。」
簡潔にそう言うと、私の耳に携帯を押し付けた。
『坂巻くん!?どこ!?』
慌てる義人氏の声に、どっと体中の血が巡り、感情が声と涙になって流れ出した。
「ごめん……ダメみたい……」
『希和ッ!』
助けて。
お願い、早く来て。
そばにいて。
ボロボロと涙がこぼれた。
「春秋(はるあき)。俺の鞄も持って。」
坂巻くんは自分の鞄も朝秀くんに押し付けると、有無を言わさず私を肩に担ぎ上げた。
嘘っ!
びっくりしてジタバタしてると、
「孝義!荷物じゃないんやから!」
と、朝秀くんが言ってくれた。
そうだそうだ!
「このほうが早いのに。」
坂巻くんはそうぼやいて、私を下ろすと、すかさず、今度はお姫さま抱っこをした。
ひやーっ!
小柄なのに筋肉質でたくましい坂巻くんは、私を抱き上げたまま走り出した。
「どこ行くねーん!保健室ちゃうんか!?」
3人分の鞄を持った朝秀くんが追いかけてくる。
「いいから来い!」
坂巻くんは、登校してくる生徒の流れに逆らって、ぶつからないように走った。
「めっちゃ見られてる……恥ずかしい……」
泣きながらそう言うと
『目ぇつぶっとき。すぐ行くから。』
と受話器の向こうから義人氏が力強く言ってくれた。
……電話、まだ繋がってたんだ。
また新たな涙がこみ上げた。
ほぼ同時に坂巻くんが
「目ぇつぶっとき。非常事態や。」
と、言ってくれて、ステレオ効果で、私はギュッと目をつぶった。
涙がこめかみを伝って流れ落ちた。
「希和っ!」
義人氏の声に、パッと目を開ける。
人混みをかき分けて、義人氏が現れた。
声にならない声とともに、私は両手を、身体ごと、義人氏のほうへと伸ばす。
「おおおおっ。危ないって。」
すぐに坂巻くんは私を下ろしてくれた。