夢が醒めなくて
廊下に出て、お寺じゃなくてご家族用の玄関から出ようとしてると、孝義くんのお母さまが紙袋を持たせてくださった。
中には、白い液体の満ちた一升瓶と練り香?
「どちらも頂き物ですけど、よろしければどうぞ。甘酒と、梅の花の香りの練り香ですって。お好きとうかがいましたので。」
「え!ありがとうございます!」
「おばさま。俺も!どぶろくがいい!」
春秋くんの図々しいおねだりを黙殺して、孝義くんのお母さまは奥へと下がられた。
外へ出ると、車寄せに義人氏のベンツ。
「先輩、今日はまた一段とおしゃれですね。お見合い?」
春秋くんに言い当てられ、義人氏はばつが悪そうだ。
「朝秀くん、勉強はかどったやろ?学年トップの2人と一緒にテスト勉強って、すごい贅沢やん。」
子供のように春秋くんをイジメる義人氏に呆れつつ、車に乗り込んだ。
春秋くんを送り届けた後で、おもむろに聞いてみた。
「お見合い、いかがでした?」
そんなつもりはないのに、声が硬くなり、敬語で距離をとってしまう。
「……知り合いやったわ。」
義人氏は気まずそうに言った。
「まさか、元カノ?元セフレ?」
そう聞いたら、ちょっと怒られた。
「そーゆーデリカシーのない言葉は使わんとき。……単にお茶席で一緒になったことがあるだけの子や。」
義人氏は何となく不機嫌そうだった。
つまんないので、孝義くんのお母さまにもらった練り香の缶の蓋を開けてみた。
ふわりと優しい香りが漂った。
「……ええ香りやな。」
「うん。梅の香り。そのものじゃないけど、確かに似てるね。」
ほうっとため息が出た。
こっそり横目で義人氏を見る。
ボウタイをほどき、ウィングカラーのシャツのボタンをいくつか開けた義人氏は、腹が立つほどかっこいい。
お見合い相手がこんな人だったら、誰だってその気になっちゃうよ。
……ずっと断り続けるわけにはいかないよね。
考えると、いろいろともやもやする。
「夜桜はライトアップしてるとこ多いのに、梅は夜は見せてくれへんねんなあ。」
義人氏がボソッとそう言った。
そんなに梅宮神社に行きたかったのかしら。
「お家の梅も綺麗やけど?懐中電灯で照らしてみる?」
でも義人氏は、乗り気じゃなさそう。
「まだ、帰りたくないー。希和、どっか行きたいとこある?どこでも行くで?」
と、珍しいことを言い出した。
「テスト前やから、帰る。」
けんもほろろにそう言ったら、義人氏はため息をついた。
「了解。」
……夜景でも見に連れてって、って言うべきだったのかしら。
中には、白い液体の満ちた一升瓶と練り香?
「どちらも頂き物ですけど、よろしければどうぞ。甘酒と、梅の花の香りの練り香ですって。お好きとうかがいましたので。」
「え!ありがとうございます!」
「おばさま。俺も!どぶろくがいい!」
春秋くんの図々しいおねだりを黙殺して、孝義くんのお母さまは奥へと下がられた。
外へ出ると、車寄せに義人氏のベンツ。
「先輩、今日はまた一段とおしゃれですね。お見合い?」
春秋くんに言い当てられ、義人氏はばつが悪そうだ。
「朝秀くん、勉強はかどったやろ?学年トップの2人と一緒にテスト勉強って、すごい贅沢やん。」
子供のように春秋くんをイジメる義人氏に呆れつつ、車に乗り込んだ。
春秋くんを送り届けた後で、おもむろに聞いてみた。
「お見合い、いかがでした?」
そんなつもりはないのに、声が硬くなり、敬語で距離をとってしまう。
「……知り合いやったわ。」
義人氏は気まずそうに言った。
「まさか、元カノ?元セフレ?」
そう聞いたら、ちょっと怒られた。
「そーゆーデリカシーのない言葉は使わんとき。……単にお茶席で一緒になったことがあるだけの子や。」
義人氏は何となく不機嫌そうだった。
つまんないので、孝義くんのお母さまにもらった練り香の缶の蓋を開けてみた。
ふわりと優しい香りが漂った。
「……ええ香りやな。」
「うん。梅の香り。そのものじゃないけど、確かに似てるね。」
ほうっとため息が出た。
こっそり横目で義人氏を見る。
ボウタイをほどき、ウィングカラーのシャツのボタンをいくつか開けた義人氏は、腹が立つほどかっこいい。
お見合い相手がこんな人だったら、誰だってその気になっちゃうよ。
……ずっと断り続けるわけにはいかないよね。
考えると、いろいろともやもやする。
「夜桜はライトアップしてるとこ多いのに、梅は夜は見せてくれへんねんなあ。」
義人氏がボソッとそう言った。
そんなに梅宮神社に行きたかったのかしら。
「お家の梅も綺麗やけど?懐中電灯で照らしてみる?」
でも義人氏は、乗り気じゃなさそう。
「まだ、帰りたくないー。希和、どっか行きたいとこある?どこでも行くで?」
と、珍しいことを言い出した。
「テスト前やから、帰る。」
けんもほろろにそう言ったら、義人氏はため息をついた。
「了解。」
……夜景でも見に連れてって、って言うべきだったのかしら。