夢が醒めなくて
「竹原。これ。やる。」
ゴールデンウイークに入る前日、孝義くんが私に巾着をくれた。
「なぁに?」
赤い金襴の巾着を開けると、中には柔らかい色の珊瑚のお数珠が入っていた。
「お数珠?くれるの?」
まあ、孝義くん家は大きなお寺だし、お数珠はナンボでもあるだろうけど……何となく、コレはちょっと違う気がした。
「お念珠、ってうちではゆーてる。明治のもんでボロボロやったけど、糸替えしたら綺麗になったし。」
明治時代!
「えー!すごい!こんなに綺麗やのに。」
古いモノが大好きな私は、改めてしげしげと拝見した。
優しい柔らかい珊瑚からは、慈愛すら感じた。
取り替えたという房は濃い紫で、淡い珊瑚の色に、清楚で可愛く映えていた。
「何かパワーありそう。うれしい。でも、いいの?」
「持っててほしい。……ふさわしい気がするから。」
孝義くんの言葉に、不思議なものを感じた。
「ふさわしい?私に?」
重ねて聞くと、孝義くんは苦笑した。
「あんまり聞かんといて。うまく言えんし。まあ、竹原を守ってくれるやろ。」
守ってくれる?
……何だかうれしくなってきた。
中学に入学する時、義人氏が買ってくれたネックレスの真っ赤な珊瑚とは同じ珊瑚とは思えない淡いかわいい色。
「ありがとう。大事にします。」
せっかくなのでお数珠改めお念珠に手を通して合掌してお辞儀した。
「南無阿弥陀仏。」
条件反射のようにそう返事した孝義くんの声がすごく低くていい声で……ドキッとした。
「えー。いいな。俺も欲しい~。それ、高子(たかいこ)さまのん?」
春秋くんがべったりと孝義くんに抱きついてそうおねだりした。
たかいこ……「残菊」の蔵書印のかただ。
「くっつくな!あつっくるしい。……ああ。高子さまがお輿入れして来られた時につくらはったもんや。」
孝義くんは春秋くんをグイッと押しながらそう返事した。
……2人とも、たかいこ「さま」って呼ぶんだ。
何か、新鮮。
「こいつね、坊主のくせに霊感があって、ちっちゃい頃に高子さまの幽霊と話したことあるんやって。」
ひゃらひゃらと笑いながら春秋くんが言った。
「そうなの?高子さまって、あの本の……。いいの?怒られへん?私がもらってしもて。」
そう聞いたら、春秋くんが変な顔をした。
ん?
「……希和子ちゃん、今のん、信じるん?霊感なかったよね?」
春秋くんは不思議そうに聞いた。
「え?えーと……見たことないし、現実感ないし、他のヒトがゆーてたら信じひんかもやけど、孝義くんやし。」
そう言ったら、春秋くんは呆れたようだ。
ゴールデンウイークに入る前日、孝義くんが私に巾着をくれた。
「なぁに?」
赤い金襴の巾着を開けると、中には柔らかい色の珊瑚のお数珠が入っていた。
「お数珠?くれるの?」
まあ、孝義くん家は大きなお寺だし、お数珠はナンボでもあるだろうけど……何となく、コレはちょっと違う気がした。
「お念珠、ってうちではゆーてる。明治のもんでボロボロやったけど、糸替えしたら綺麗になったし。」
明治時代!
「えー!すごい!こんなに綺麗やのに。」
古いモノが大好きな私は、改めてしげしげと拝見した。
優しい柔らかい珊瑚からは、慈愛すら感じた。
取り替えたという房は濃い紫で、淡い珊瑚の色に、清楚で可愛く映えていた。
「何かパワーありそう。うれしい。でも、いいの?」
「持っててほしい。……ふさわしい気がするから。」
孝義くんの言葉に、不思議なものを感じた。
「ふさわしい?私に?」
重ねて聞くと、孝義くんは苦笑した。
「あんまり聞かんといて。うまく言えんし。まあ、竹原を守ってくれるやろ。」
守ってくれる?
……何だかうれしくなってきた。
中学に入学する時、義人氏が買ってくれたネックレスの真っ赤な珊瑚とは同じ珊瑚とは思えない淡いかわいい色。
「ありがとう。大事にします。」
せっかくなのでお数珠改めお念珠に手を通して合掌してお辞儀した。
「南無阿弥陀仏。」
条件反射のようにそう返事した孝義くんの声がすごく低くていい声で……ドキッとした。
「えー。いいな。俺も欲しい~。それ、高子(たかいこ)さまのん?」
春秋くんがべったりと孝義くんに抱きついてそうおねだりした。
たかいこ……「残菊」の蔵書印のかただ。
「くっつくな!あつっくるしい。……ああ。高子さまがお輿入れして来られた時につくらはったもんや。」
孝義くんは春秋くんをグイッと押しながらそう返事した。
……2人とも、たかいこ「さま」って呼ぶんだ。
何か、新鮮。
「こいつね、坊主のくせに霊感があって、ちっちゃい頃に高子さまの幽霊と話したことあるんやって。」
ひゃらひゃらと笑いながら春秋くんが言った。
「そうなの?高子さまって、あの本の……。いいの?怒られへん?私がもらってしもて。」
そう聞いたら、春秋くんが変な顔をした。
ん?
「……希和子ちゃん、今のん、信じるん?霊感なかったよね?」
春秋くんは不思議そうに聞いた。
「え?えーと……見たことないし、現実感ないし、他のヒトがゆーてたら信じひんかもやけど、孝義くんやし。」
そう言ったら、春秋くんは呆れたようだ。