夢が醒めなくて
「そやな。綺麗やけど表情が死んでる?……笑顔が見たいな。」
春秋くんがそうこぼすと、孝義くんが言いにくそうに言った。
「まあ、高子さまはあんまり幸せな人生じゃなかったからな。最期は自殺やし。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。」
自殺?
……そうやったんや。
「身体はもちろんやけど、心が死んでしまわんように、自分に正直に生きてほしいから、無理は言わん。でも俺やったらお前を不安なまま放置せぇへん。」
別れ際に、孝義くんはそう言ってくれた。
「……うん。そう思う。ありがとう。」
素直にそう言っていた。
帰る道々、春秋くんが言った。
「たぶん俺しか損得勘定抜きで……てゆーか、下心も遠慮もなく発言できるもんおらんから、僭越ながら言わせてもらうけどな、希和子ちゃん、ちゃんと気持ちを伝えたほうがいいわ。」
「……誰に。」
つい声が低くなった。
春秋くんは苦笑していた。
「わかってるやろ。……てか、何をそう意地はるん?素直じゃないわ。まあ希和子ちゃんらしいけど。」
「わからん。知らん。」
私は完全に拗ねていた。
子供みたいに、駄々っ子になってる。
「はいはい。認めたくないだけやろ。でもなあ、けっこう今、大事な時やと思うで。見合い、断れはらへんねんろ?大人の事情が、オトナの情事になってくの、指くわえて見てる気ぃか?」
思わず春秋くんを睨んだ。
春秋くんは、肩をすくめてから、私の手を少し強引に掴んで引き寄せた。
びっくりした。
悪ふざけでも、そんなことされたことなかった。
いやっ!……と、声を挙げることもできず、全身が硬直した。
心臓がドクドクとにぎやかな音をたてる。
見開いた目すら閉じられず、いやな汗が流れた。
「……ほら。オトモダチの俺でもこの反応。竹原先輩だけが特別なんやろ。希和子ちゃん、頭より身体のほうが正直やで。いいかげん、認めたら?」
そう言って、春秋くんは私の手を解放した。
ざわざわしてた悪寒がおさまってから、ようやく私は声を出すことができた。
「……冗談でも、やめて……」
そうして、ずるずると滑り落ちるように地面に座ってしまった。
怖い。
やっぱり怖い。
ずっと、義人氏や、春秋くんや、孝義くんが気を遣ってくれてて、私に誰も近づくヒトがいなかった。
だから、この感覚、忘れてたけど……治ったわけじゃなかったんだ。
今さらながら、カタカタと震えが走った。
春秋くんがそうこぼすと、孝義くんが言いにくそうに言った。
「まあ、高子さまはあんまり幸せな人生じゃなかったからな。最期は自殺やし。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。」
自殺?
……そうやったんや。
「身体はもちろんやけど、心が死んでしまわんように、自分に正直に生きてほしいから、無理は言わん。でも俺やったらお前を不安なまま放置せぇへん。」
別れ際に、孝義くんはそう言ってくれた。
「……うん。そう思う。ありがとう。」
素直にそう言っていた。
帰る道々、春秋くんが言った。
「たぶん俺しか損得勘定抜きで……てゆーか、下心も遠慮もなく発言できるもんおらんから、僭越ながら言わせてもらうけどな、希和子ちゃん、ちゃんと気持ちを伝えたほうがいいわ。」
「……誰に。」
つい声が低くなった。
春秋くんは苦笑していた。
「わかってるやろ。……てか、何をそう意地はるん?素直じゃないわ。まあ希和子ちゃんらしいけど。」
「わからん。知らん。」
私は完全に拗ねていた。
子供みたいに、駄々っ子になってる。
「はいはい。認めたくないだけやろ。でもなあ、けっこう今、大事な時やと思うで。見合い、断れはらへんねんろ?大人の事情が、オトナの情事になってくの、指くわえて見てる気ぃか?」
思わず春秋くんを睨んだ。
春秋くんは、肩をすくめてから、私の手を少し強引に掴んで引き寄せた。
びっくりした。
悪ふざけでも、そんなことされたことなかった。
いやっ!……と、声を挙げることもできず、全身が硬直した。
心臓がドクドクとにぎやかな音をたてる。
見開いた目すら閉じられず、いやな汗が流れた。
「……ほら。オトモダチの俺でもこの反応。竹原先輩だけが特別なんやろ。希和子ちゃん、頭より身体のほうが正直やで。いいかげん、認めたら?」
そう言って、春秋くんは私の手を解放した。
ざわざわしてた悪寒がおさまってから、ようやく私は声を出すことができた。
「……冗談でも、やめて……」
そうして、ずるずると滑り落ちるように地面に座ってしまった。
怖い。
やっぱり怖い。
ずっと、義人氏や、春秋くんや、孝義くんが気を遣ってくれてて、私に誰も近づくヒトがいなかった。
だから、この感覚、忘れてたけど……治ったわけじゃなかったんだ。
今さらながら、カタカタと震えが走った。