夢が醒めなくて
翌早朝、いつもより早くに目が覚めた。
せっかくなので大浴場に行ってみようかな~……と、同じ部屋で寝ていたお母さんと由未お姉さんを起こさないように、そーっと部屋を抜け出した。
廊下を歩いてると、背後からパタパタとスリッパの音が近づいてきた。
振り返ると、義人氏だった。
気をつけてたつもりだったんだけど、隣室の義人氏にはバレちゃったんだ。
さすがというか、何というか……
それにしても朝イチからかっこいいんだから!もう!
整えてない髪も、乱れた浴衣も、義人氏のかっこよさを損なわない。
ダメだダメだ。
私は、邪念をはらって、思い切って言った。
「おはよう。お兄ちゃん。」
義人氏の足が、表情が止まった。
「ごめん。起こしたんやね。大丈夫。たぶん。……でもせっかくやし、このままお庭のお散歩しよっか。」
そう言って、私は自分から義人氏の腕を取った。
義人氏はあきらかに困惑していた。
けど、私は気付かないふりをして、義人氏に甘えて歩いた。
義人氏の葛藤が手に取るように伝わってきた。
……これまでの掛け値なしの愛情を当たり前にように享受していた私には、義人氏の心の機微ひとつひとつが新鮮だった。
うん。
いいかもしれない。
「夕べの、天花寺(てんげいじ)の書を教えていただくって話、具体的にはどうすればいいの?」
そう尋ねると、義人氏はちょっと首を傾げた。
「さあ、どやろ。百合子のように住み込む必要はないけど、継続したほうがいいなら、月に何度か習いに行くか?東京まで。」
「……うん。でも独りは怖いし、やっぱり一緒に来てほしい。お兄ちゃんにも。」
そう言ったら、義人氏は何とも言えない表情になった。
「何の罰ゲームやねん。」
罰ゲーム?
違うよ。
私、義人氏にずっとこうして甘えてたいの。
一生、お父さんとお母さんの娘として、由未お姉さんの妹として、いっぱい愛して孝行したいの。
義人氏に、幻滅したくないの。
ずっと、一番近くで笑ってたいの。
お願い。
笑顔を見せて。
優しくして。
……妹でいいから……愛して。
せっかくなので大浴場に行ってみようかな~……と、同じ部屋で寝ていたお母さんと由未お姉さんを起こさないように、そーっと部屋を抜け出した。
廊下を歩いてると、背後からパタパタとスリッパの音が近づいてきた。
振り返ると、義人氏だった。
気をつけてたつもりだったんだけど、隣室の義人氏にはバレちゃったんだ。
さすがというか、何というか……
それにしても朝イチからかっこいいんだから!もう!
整えてない髪も、乱れた浴衣も、義人氏のかっこよさを損なわない。
ダメだダメだ。
私は、邪念をはらって、思い切って言った。
「おはよう。お兄ちゃん。」
義人氏の足が、表情が止まった。
「ごめん。起こしたんやね。大丈夫。たぶん。……でもせっかくやし、このままお庭のお散歩しよっか。」
そう言って、私は自分から義人氏の腕を取った。
義人氏はあきらかに困惑していた。
けど、私は気付かないふりをして、義人氏に甘えて歩いた。
義人氏の葛藤が手に取るように伝わってきた。
……これまでの掛け値なしの愛情を当たり前にように享受していた私には、義人氏の心の機微ひとつひとつが新鮮だった。
うん。
いいかもしれない。
「夕べの、天花寺(てんげいじ)の書を教えていただくって話、具体的にはどうすればいいの?」
そう尋ねると、義人氏はちょっと首を傾げた。
「さあ、どやろ。百合子のように住み込む必要はないけど、継続したほうがいいなら、月に何度か習いに行くか?東京まで。」
「……うん。でも独りは怖いし、やっぱり一緒に来てほしい。お兄ちゃんにも。」
そう言ったら、義人氏は何とも言えない表情になった。
「何の罰ゲームやねん。」
罰ゲーム?
違うよ。
私、義人氏にずっとこうして甘えてたいの。
一生、お父さんとお母さんの娘として、由未お姉さんの妹として、いっぱい愛して孝行したいの。
義人氏に、幻滅したくないの。
ずっと、一番近くで笑ってたいの。
お願い。
笑顔を見せて。
優しくして。
……妹でいいから……愛して。