夢が醒めなくて
「そっか。恭匡さん、お姉ちゃんの旦那さんやもんね。じゃあ、お義兄(にい)さん。」
……希和の中では、「おにいさん」と「おにいちゃん」には、ハッキリとした格差があるらしい。
「お兄ちゃんは、今まで習ったことなかったの?書道。」
で、俺のことは「お兄ちゃん」で確定なのか。
何か、むかつく。
そもそも俺は、もともとは妹にマジ惚れの妹ヲタだから、「お兄ちゃん」って呼ばれたら萌える可能性もあったんだが……全く逆だった。
希和は、妹じゃない。
ハッキリと自覚した。
一己の女性として、希和が好きなんだ。
むかつくむかつくむかつく。
「書道って言うと、恭匡さんが嫌がるぞ。書(しょ)でいいそうや。書に道がついたのは明治の後半。」
ぶっきらぼうにそう言うと、希和は神妙に口を閉じてうなずいた。
希和のこういうくそ真面目なところがたまらず愛しくて、ふっと気持ちがほぐれた。
……惚れてるよな、ほんと。
それにしても、いつの間にこんなに成長したんだろう。
もう少女じゃない。
美味しそうな乙女……なんだけど、なぜか俺にとっては、侵すべからざる神聖な乙女になってしまった。
昔の俺なら、あっさりヤッてたぞ。
くそっ!
「やあ、いらっしゃい。」
東京駅からは会社の車を借りて移動した。
「こんにちは。お義兄さん!よろしくお願いします。」
突然そう呼んだ希和に、恭匡さんは目を丸くして、それからうれしそうに頬を緩めた。
「聞いた?おにいさん、だって。ふふふ。」
……聞いた聞いた、そりゃ聞こえるわ、こんなに近くにいるのに。
「どうぞ~。ちょうどお昼時やから、由未ちゃんがご飯作ってくれてるよ~。」
結婚して何年たっても、2人の時は由未に「ちゃん」を付けて呼ぶことが多い恭匡さん……まあ、由未も「恭(きょう)兄さま」呼びが根強いみたいやけど。
2人とも改めようと努力するの、やめたようだ。
「お義兄さん!コレ!お土産です!」
希和はそう言って豆餅を恭匡さんに手渡した。
「ありがと~~~。餡なし?餡なしだよね?うれしいよ。餡の入ってるのはこっちでもたまに売ってるけど、餡なしは買えないから。由未ちゃ~ん、百合子~~~、豆餅きたよ~。」
ニコニコとご満悦な恭匡さんについてお宅へ入る。
……てか、百合子も来てるのか。
昨秋、百合子の結婚式に参列して以来だな。
百合子は去年から大学を休学して、しばらくココに同居していた。
結婚してからは、旦那の碧生(あおい)くんとすぐ近くに家を借りて住んでいるらしい。
……希和の中では、「おにいさん」と「おにいちゃん」には、ハッキリとした格差があるらしい。
「お兄ちゃんは、今まで習ったことなかったの?書道。」
で、俺のことは「お兄ちゃん」で確定なのか。
何か、むかつく。
そもそも俺は、もともとは妹にマジ惚れの妹ヲタだから、「お兄ちゃん」って呼ばれたら萌える可能性もあったんだが……全く逆だった。
希和は、妹じゃない。
ハッキリと自覚した。
一己の女性として、希和が好きなんだ。
むかつくむかつくむかつく。
「書道って言うと、恭匡さんが嫌がるぞ。書(しょ)でいいそうや。書に道がついたのは明治の後半。」
ぶっきらぼうにそう言うと、希和は神妙に口を閉じてうなずいた。
希和のこういうくそ真面目なところがたまらず愛しくて、ふっと気持ちがほぐれた。
……惚れてるよな、ほんと。
それにしても、いつの間にこんなに成長したんだろう。
もう少女じゃない。
美味しそうな乙女……なんだけど、なぜか俺にとっては、侵すべからざる神聖な乙女になってしまった。
昔の俺なら、あっさりヤッてたぞ。
くそっ!
「やあ、いらっしゃい。」
東京駅からは会社の車を借りて移動した。
「こんにちは。お義兄さん!よろしくお願いします。」
突然そう呼んだ希和に、恭匡さんは目を丸くして、それからうれしそうに頬を緩めた。
「聞いた?おにいさん、だって。ふふふ。」
……聞いた聞いた、そりゃ聞こえるわ、こんなに近くにいるのに。
「どうぞ~。ちょうどお昼時やから、由未ちゃんがご飯作ってくれてるよ~。」
結婚して何年たっても、2人の時は由未に「ちゃん」を付けて呼ぶことが多い恭匡さん……まあ、由未も「恭(きょう)兄さま」呼びが根強いみたいやけど。
2人とも改めようと努力するの、やめたようだ。
「お義兄さん!コレ!お土産です!」
希和はそう言って豆餅を恭匡さんに手渡した。
「ありがと~~~。餡なし?餡なしだよね?うれしいよ。餡の入ってるのはこっちでもたまに売ってるけど、餡なしは買えないから。由未ちゃ~ん、百合子~~~、豆餅きたよ~。」
ニコニコとご満悦な恭匡さんについてお宅へ入る。
……てか、百合子も来てるのか。
昨秋、百合子の結婚式に参列して以来だな。
百合子は去年から大学を休学して、しばらくココに同居していた。
結婚してからは、旦那の碧生(あおい)くんとすぐ近くに家を借りて住んでいるらしい。