夢が醒めなくて
「さすがに眠いわ。それに、あちこち筋肉痛。」
それでもランチに現れたさやか嬢は、満足そうに言った。
「義人さんと、身体の相性、いいみたい。すごーく気持ちよかった。また、しよ?」
……ああ、俺も、想像以上によかった。
さやか嬢の言う通り、相性がいいのかもしれない。
でも、俺は冷たく言い放った。
「後腐れなし、ゆーたやん。2度めは、ない。……それに、自慢じゃないけど、俺、関係した子ぉみんなに『身体の相性がいい』って言われるから。」
これは本当だ。
たぶん『相性がいい』んじゃなくて、俺の観察眼と技術の賜物だろう。
伊達に遊んできてないってことだ。
さやか嬢は、明らかに鼻白んだ。
「あ、そう。……ま、想像通り、サービス精神旺盛ってことね。大変けっこうでございました。ご馳走さま。」
「下品な奴。……まあでも、そのほうがいいわ。さやかちゃんに媚びられると、イラッとする。」
遠慮のない俺の言葉に、さやか嬢は苦笑していた。
……それでも、さやか嬢に打ち解けてることを、俺も自覚していた。
「褒め言葉と取っておくわ。……例の子の情報、入ってきたわよ。聞きたい?」
「美幸ちゃん!?」
探しても探しても見つけられなかった美幸ちゃんが、ようやく見つかったのか!
「うん。意外なところで引っかかってきたわ。准看護師学校に在籍してた。」
じゅん……看護師?
何?
めっちゃまっとうな仕事につこうとしてる、ってことか?
「……てっきり、風俗か、金持ちの愛人になってると思ってた……」
拍子抜けしたぞ。
でも、これで……希和も、啓也くんも喜ぶ……。
ホッとした俺に、さやか嬢は言った。
「うん。正解。風俗にもいたし、お金持ちの華僑の愛人にもなってた。でも、雇い主が脳梗塞で半身不随になっちゃったんだって。美幸ちゃんって、イイ子なんでしょうね。甲斐甲斐しく介護してるから、雇い主の娘さんが、看護師学校で勉強しろって勧めてくれたそうよ。……中卒だから、とりあえずは准看護師学校に入学したみたい。」
……そういや、美幸ちゃん、面倒見のいい子だったっけな。
そうか。
最悪の状況から、ちゃんと自力で這い出ようとしてるのか。
頭が下がるよ。
「……今は、様子を見て、何もしないほうがいいんじゃない?余計な茶々入れて、話をこじらせる必要ないかも、って思ったんだけど……」
さやか嬢の言うこともわかる。
でも、さやか嬢や俺が、しょせん他人だからそんな風に言えるんじゃないかな。
希和や啓也くんは、一刻も早く、美幸ちゃんを取り戻したいだろう。
「ま。優秀な弁護士さんと相談して決めて。」
そう言って、さやか嬢はいつものように、クールに店を出て行った。
……一夜のセックスで、一年半かけてせっかく築いてきたイイ距離感を崩してほしくなかった俺は、何となくホッとした。
それでもランチに現れたさやか嬢は、満足そうに言った。
「義人さんと、身体の相性、いいみたい。すごーく気持ちよかった。また、しよ?」
……ああ、俺も、想像以上によかった。
さやか嬢の言う通り、相性がいいのかもしれない。
でも、俺は冷たく言い放った。
「後腐れなし、ゆーたやん。2度めは、ない。……それに、自慢じゃないけど、俺、関係した子ぉみんなに『身体の相性がいい』って言われるから。」
これは本当だ。
たぶん『相性がいい』んじゃなくて、俺の観察眼と技術の賜物だろう。
伊達に遊んできてないってことだ。
さやか嬢は、明らかに鼻白んだ。
「あ、そう。……ま、想像通り、サービス精神旺盛ってことね。大変けっこうでございました。ご馳走さま。」
「下品な奴。……まあでも、そのほうがいいわ。さやかちゃんに媚びられると、イラッとする。」
遠慮のない俺の言葉に、さやか嬢は苦笑していた。
……それでも、さやか嬢に打ち解けてることを、俺も自覚していた。
「褒め言葉と取っておくわ。……例の子の情報、入ってきたわよ。聞きたい?」
「美幸ちゃん!?」
探しても探しても見つけられなかった美幸ちゃんが、ようやく見つかったのか!
「うん。意外なところで引っかかってきたわ。准看護師学校に在籍してた。」
じゅん……看護師?
何?
めっちゃまっとうな仕事につこうとしてる、ってことか?
「……てっきり、風俗か、金持ちの愛人になってると思ってた……」
拍子抜けしたぞ。
でも、これで……希和も、啓也くんも喜ぶ……。
ホッとした俺に、さやか嬢は言った。
「うん。正解。風俗にもいたし、お金持ちの華僑の愛人にもなってた。でも、雇い主が脳梗塞で半身不随になっちゃったんだって。美幸ちゃんって、イイ子なんでしょうね。甲斐甲斐しく介護してるから、雇い主の娘さんが、看護師学校で勉強しろって勧めてくれたそうよ。……中卒だから、とりあえずは准看護師学校に入学したみたい。」
……そういや、美幸ちゃん、面倒見のいい子だったっけな。
そうか。
最悪の状況から、ちゃんと自力で這い出ようとしてるのか。
頭が下がるよ。
「……今は、様子を見て、何もしないほうがいいんじゃない?余計な茶々入れて、話をこじらせる必要ないかも、って思ったんだけど……」
さやか嬢の言うこともわかる。
でも、さやか嬢や俺が、しょせん他人だからそんな風に言えるんじゃないかな。
希和や啓也くんは、一刻も早く、美幸ちゃんを取り戻したいだろう。
「ま。優秀な弁護士さんと相談して決めて。」
そう言って、さやか嬢はいつものように、クールに店を出て行った。
……一夜のセックスで、一年半かけてせっかく築いてきたイイ距離感を崩してほしくなかった俺は、何となくホッとした。