夢が醒めなくて
再び希和を組み敷く。
時間をかけてたっぷりと希和に悦楽を覚えさせてから、耳許で囁いた。

「誠実な坂巻くんに、このこと、どう伝えるん?内緒?」

希和は悲痛な表情で呻いた。
「……意地悪。」

まあ、な。

敢えて優しく優しくキスを繰り返す。
そしたら、希和が本気でぐずって泣き出した。

「……もう……やだ。つらい。好きなのに。好きなのに、こんなの……ひどい……」

よしっ!

心の中でガッツポーズをして、俺は希和にだめ押しの深いキスをした。
唇をてらてらにして、とろーんとしてる希和に噛んで含めるように言った。

「愛してる。希和を妹やと思ったことない。俺が、幸せにしてやりたいってずっと思ってた。」

言った!
ハッキリ言った!
誤解も曲解もしようがないように伝えたつもりだった。
一気にハッピーエンドだと確信した。
けど希和の瞳は暗く曇ってしまった。

「希和?」

伝わってない?
視線をそらして、希和は言った。

「さやかさんにキスマークつけられたまま、そんなこと言われても、信じられへん。」

キスマーク?
どこに?
狼狽した俺を希和は暗く嘲笑った。
そして両手で顔を覆って、しくしくと泣いた。

「……希和……」

言葉が出ない。
確かに、夕べ、さやか嬢とヤッてしまった。
どうしてこのタイミングなんだろう。
ずっと無関係だったのに。
やっと、さやか嬢との膠着した関係を終わらせるゴールが見えてきたのに。

「……ごめんなさい。」

なぜか、希和は謝った。

意味がわからない。

わからないけれど、もう希和を手放す気はない。
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