夢が醒めなくて
9時頃、お母さんが起こしに来てくれた。
「希和ちゃん?そろそろ起きないと……あら?顔、赤い?熱があるんじゃない?」
「……え?」
目を開けると、心配そうにお母さんが私の顔を覗き込んでいた。
「おはよう、お母さん。顔、赤い?」
「おはよう。……ん~、けっこう熱いわよ?お腹出して寝ちゃった?」
私のひたいに自分のひたいをくっつけて、お母さんはそうおっしゃった。
間近で見たお母さんの瞳は、義人氏と同じ目で……私の胸は急にドキドキと激しく波打った。
お腹どころか……結局、エアコンが効き過ぎて寒いお部屋でずーっと裸だったから……風邪ひいたのかも。
「喉とか、頭、痛くない?」
そう聞かれて、モソッと起き上がってみた。
「……身体のあちこちが痛くて、けだるいです。」
風邪の関節痛ではなく、変な格好をして変に力が入ってた筋肉痛だと思うけど。
「やっぱり風邪かしら。……今日はお勉強会やめといて、寝てたほうがいいんじゃない?」
お母さんの提案に、私はちゃっかり乗らせてもらった。
さすがに、今日これから孝義くんと会うのはためらわれた。
……どうしよう。
孝義くんとつきあってる、って言っても……一緒にいる時間が増えて、誰よりも優しくしてもらって……恋人と言うよりは、兄弟か親戚のような状態だった。
思えば、皮肉なものだ。
義人氏にずっと甘やかしていてほしくて、去年、ことさら妹の立場を主張したのに……気がついたら会話も顔を合わすことも激減して遠い存在になってしまっていた。
そして、まっすぐ向き合っておつきあいしていくつもりだった孝義くんには家族のように頼り切って支えてもらって……
ううん。
孝義くんが、本当は私にすごく遠慮して気を遣ってくれていることに、私はあぐらをかいていた。
手をつなぐだけで、肩を抱き寄せられるだけで、まるで人形のように硬直して怖がる私を追い詰めないように……ずっと見守ってくれていた。
そんな孝義くんを心から信頼してるし感謝でいっぱい。
人として、親友しとして、大好き。
でも、どれだけ大切にしてもらっても、過分な愛情を注がれても……なぜか、孝義くんに恋している感覚にはならなかった。
理不尽なことに、お見合い相手のさやかさんだけでなく、何人もの女性の影が見え隠れする生活をまた始めてしまった義人氏が恋しくてたまらなかった。
義人氏が帰宅しない夜、勝手に義人氏の部屋で泣きながら過ごした。
義人氏が睡眠薬を服用し始めてからは、夜中にこっそりしのびこんでは寝顔に見とれた。
……眠ってる義人氏に勝手に唇を押しつけたのが私のファーストキスだって告白したら、義人氏、どんな顔するかしら。
「希和ちゃん?そろそろ起きないと……あら?顔、赤い?熱があるんじゃない?」
「……え?」
目を開けると、心配そうにお母さんが私の顔を覗き込んでいた。
「おはよう、お母さん。顔、赤い?」
「おはよう。……ん~、けっこう熱いわよ?お腹出して寝ちゃった?」
私のひたいに自分のひたいをくっつけて、お母さんはそうおっしゃった。
間近で見たお母さんの瞳は、義人氏と同じ目で……私の胸は急にドキドキと激しく波打った。
お腹どころか……結局、エアコンが効き過ぎて寒いお部屋でずーっと裸だったから……風邪ひいたのかも。
「喉とか、頭、痛くない?」
そう聞かれて、モソッと起き上がってみた。
「……身体のあちこちが痛くて、けだるいです。」
風邪の関節痛ではなく、変な格好をして変に力が入ってた筋肉痛だと思うけど。
「やっぱり風邪かしら。……今日はお勉強会やめといて、寝てたほうがいいんじゃない?」
お母さんの提案に、私はちゃっかり乗らせてもらった。
さすがに、今日これから孝義くんと会うのはためらわれた。
……どうしよう。
孝義くんとつきあってる、って言っても……一緒にいる時間が増えて、誰よりも優しくしてもらって……恋人と言うよりは、兄弟か親戚のような状態だった。
思えば、皮肉なものだ。
義人氏にずっと甘やかしていてほしくて、去年、ことさら妹の立場を主張したのに……気がついたら会話も顔を合わすことも激減して遠い存在になってしまっていた。
そして、まっすぐ向き合っておつきあいしていくつもりだった孝義くんには家族のように頼り切って支えてもらって……
ううん。
孝義くんが、本当は私にすごく遠慮して気を遣ってくれていることに、私はあぐらをかいていた。
手をつなぐだけで、肩を抱き寄せられるだけで、まるで人形のように硬直して怖がる私を追い詰めないように……ずっと見守ってくれていた。
そんな孝義くんを心から信頼してるし感謝でいっぱい。
人として、親友しとして、大好き。
でも、どれだけ大切にしてもらっても、過分な愛情を注がれても……なぜか、孝義くんに恋している感覚にはならなかった。
理不尽なことに、お見合い相手のさやかさんだけでなく、何人もの女性の影が見え隠れする生活をまた始めてしまった義人氏が恋しくてたまらなかった。
義人氏が帰宅しない夜、勝手に義人氏の部屋で泣きながら過ごした。
義人氏が睡眠薬を服用し始めてからは、夜中にこっそりしのびこんでは寝顔に見とれた。
……眠ってる義人氏に勝手に唇を押しつけたのが私のファーストキスだって告白したら、義人氏、どんな顔するかしら。