夢が醒めなくて
世話を焼きたくてしょうがないヒトなのよね。

多少気恥ずかしいけど、かつてのように私は遠慮なく甘えさせてもらうことにした。
義人氏がフーフーしながら食べさせてくれる雑炊は、とっても美味しく感じた。

「希和。」
お薬まで飲ませた後、とろけそうな瞳で義人氏は私の頭を撫でた。

「とりあえず今の段階でできる約束をさせてくれるか?」
「……約束?」
「うん。約束。もう、よそ見しない。浮気しない。」

義人氏はいたってまじめにそう言った。
本気で言ってくれてるのは伝わってきた。

でも問題は、持続できるのかどうか。
今はともかく、10年後、20年後、30年後もそう言い切れる?
返事できない私に、義人氏はちょっとおどけて言った。

「もし破ったら、俺のこと、殺してくれていいよ。」
……何を言い出すかな。
びっくりしたけど、私は真面目に考えた。

「殺しちゃったら、もう、会えないもん。……感情的になって刺しちゃうかもやけど、死んでほしくない。」
義人氏は、クッと笑った。

「じゃあ、刺していいよ。何なら、去勢してもいい。希和がそれで安心するなら、契約書かわしてもいいよ。堀正美嬢に相談してごらん?本気で書類作ってくれるわ。」

……どこまで本気でどこから冗談なのかもよくわからない。
でも、義人氏は私を胸に抱きしめて言った。

「本気や。もちろん年齢とともに愛し方は変わるやろうけど、30代は30代なりの、50代は50代なりの、70代は70代なりの、その時でき得る限りの愛し方で希和を愛したい。」

……どういう意味かしら?
キョトンとしてる私のひたいに、自分のひたいをトンとくっつけて、義人氏は言った。

「ほんまに熱あるな。今夜はお預けかぁ。……さんざん遊んできてこんなことゆーても信憑性低いかもやけど、俺、そんなに性欲強いほうじゃないから、浮気どころか、希和を抱く回数も年齢とともに激減すると思うわ。でも、希和に浮気されへんように、がんばるわ。」

な、な、な、なにゆーてるの!?
口をぱくぱくさせてると、義人氏はニコニコ笑ってキスしてくれた。
……もう。


お預け、って確かに言ったのに、結局今夜も流されて、しちゃった。
「嘘つき~。信じらんない。もう~~~。」

熱があるからか、昨日より汗だくになった私を、義人氏はウェットティッシュで拭って着替えさせてくれた。

でも、またすぐ汗のでる行為に引きずり込むんだけど。
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