夢が醒めなくて
「あー、写真撮ってきたらよかったな。また今度。准看護師の実習服が似合ってたわ。清楚に見えた。」
「清楚!?美幸ちゃんが清楚!?」

およそ似合わへん言葉に、さらに驚いた。
うわ~。
早く見たい!

啓也くんも逢いたいだろうなあ。
でも、義人氏に全て任せよう。
いろんな人にお世話になって、いっぱいお金も時間もかけて、探してくれたんだろうな。

義人氏は多くは語らないけど、弁護士の堀正美お姉さんから非合法手段を使っても探してくれてるって聞いたことがある。

とりあえずメールアドレスをもらえたんだもん。
連絡とってみよう。

何年かかってもいい。
美幸ちゃんが自由になれるのを待ってる。
……義人氏の自由も。



そう何年もかからないうちに、事態が動き始めた。
冬休みに入ってすぐの、午後。
義人氏は会社で正美お姉さんから緊急の連絡を受けると、すぐに私に電話をかけてきた。

「希和子。携帯鳴ってる。」
いつも通り3人で勉強してる最中だったけど、慌てて出た。
義人氏がメールではなく電話をかけてくることはあまりないのでドキドキした。

「はい?」
『希和。落ち着いて聞いてな。昨日、東京で啓也くんが捕まった。最初はただの職質というか補導やったんやけど……何年も前から、啓也くん、ハッキングで警察にマークされてたんや。余罪で検挙されてしもたわ。』

……何?
ハッキング?

「啓也くん……どうなるの?まだ18歳になってないから、少年院?」
声が震える。

『いや、たぶん大丈夫。啓也くんは、美幸ちゃんの所在を探してただけで、カネのためでも、誰かを攻撃したわけでもないから。せやし、今まで捕まらへんかったんやと思う。……ただ、警視庁にも侵入してたから報道されてしもた。でも、正美ちゃんがすぐ何とかしてくれるから、動揺せんでいいしな。』

なるほど。
義人氏は、先に私が報道で知ってショックを受けないように知らせてくれたのか。

電話を切った私に、朝秀くんがスマホの画面を見せてくれた。
「これか?」
「うん。たぶんそう。」

画面の見出しには、
<京都養護施設出身17歳ハッカー少年逮捕>

とあり、その下の掲示板には無責任で非道な書き込みがずらずらと続いていた。

「ひどい……」
怒りに震えて読んでると、一緒に画面をのぞきこんでいた孝義くんがボソッと言った。

「大丈夫や。これ、5年ぐらい前から2年前まで、って書いてある。……たぶん不起訴、いや18歳未満やから家裁には送られるやろけど、まあ、釈放されるやろ。……でも、ハッカーやったら、今頃、警察にスカウトされてるんちゃうか。」

ハッキング技術を買われての、スカウト?
そんなこと、あるわけないのに……元気付けてくれる気持ちがうれしかった。
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