夢が醒めなくて
「趣味じゃないですよ。」
そう言ってから、自嘲した。
「まあ、それができるなら、さやか嬢に見限られることもなかったんでしょうけど。……父なら、もっと上手くやりましたか?……いくら父の権威を笠に着ても、俺やさやか嬢では老獪な役員に翻意を決意させることはできませんでした。しょせん、青二才。あまちゃんな若造です。」
原さんは黙って聞いていた。
そして、おもむろに口元に微笑を浮かべた。
「いいんじゃないですか。義人さんが社長のコピーになる必要はないんですから。なまじ優秀でいらっしゃるからむしろ心配でした。真面目にチャレンジしようと努力なさる姿勢は賞賛に値しますが、何も義人さんが背負わなくてもいい。適材適所ですよ。鷹揚に、目を光らせていてくだされば、下が動きます。そのために私達がいるのですから。」
原さ~~~ん……と、泣きつきたくなるのを堪えて、俺は頭を下げた。
「よろしくお願いします。」
「お任せください。」
自信たっぷりな原さんは、ハッキリ言って……怖かった。
いつもの、インテリやくざじゃない。
任侠の目ぇですよ、それもう。
頼りがいありすぎて、やばいわ。
「芦沢も同行させてよろしいですか?」
ちょっとギョッとした。
確かに、啓也くんの教育と管理も原さんが目を光らせてくれてるんだけど……
「もちろんいいんだけど……啓也くんがさやか嬢の毒牙にかからないように、気をつけてやってくれるかな?」
そう言ったら、原さんは意味ありげに笑った。
多少さやか嬢の身が心配になったけど、まあ、大丈夫だろ。
彼女も修羅場はくぐってきてるよな。
うん。
原さんの指示で、金曜日の夜に関係者が集った。
さやか嬢と、彼女の元彼らしき若い弁護士、それから30代半ばぐらいの柄の悪そうな男。
うちからは堀正美嬢、原さん、啓也くんと俺。
店に入る時は肩で風を切っていた柄の悪そうな男が、原さんを見て面白いぐらいおとなしくなった。
「原さんって、何者?」
形式的な会食の後、俺の車で正美嬢と啓也くんを送って行った。
「うーん。一言ではとても言えんけど、まあ、インテリやくざ?」
正美嬢の質問にそうお茶を濁そうとしたけれど、
「原さんも施設で育った時期があらはるんですよね?」
と、既に調べてるらしく、確認されてしまった。
「うん。だから、希和にも啓也くんにも、偏見なく親身に接してくれてるんやと思うわ。」
なるべく話題を核心から逸らそうとしたけれど
「……正直、優しいんか厳しいんかよくわからんヒトです、原さん。とりあえず、怖い。」
と、啓也くんが言った。
そう言ってから、自嘲した。
「まあ、それができるなら、さやか嬢に見限られることもなかったんでしょうけど。……父なら、もっと上手くやりましたか?……いくら父の権威を笠に着ても、俺やさやか嬢では老獪な役員に翻意を決意させることはできませんでした。しょせん、青二才。あまちゃんな若造です。」
原さんは黙って聞いていた。
そして、おもむろに口元に微笑を浮かべた。
「いいんじゃないですか。義人さんが社長のコピーになる必要はないんですから。なまじ優秀でいらっしゃるからむしろ心配でした。真面目にチャレンジしようと努力なさる姿勢は賞賛に値しますが、何も義人さんが背負わなくてもいい。適材適所ですよ。鷹揚に、目を光らせていてくだされば、下が動きます。そのために私達がいるのですから。」
原さ~~~ん……と、泣きつきたくなるのを堪えて、俺は頭を下げた。
「よろしくお願いします。」
「お任せください。」
自信たっぷりな原さんは、ハッキリ言って……怖かった。
いつもの、インテリやくざじゃない。
任侠の目ぇですよ、それもう。
頼りがいありすぎて、やばいわ。
「芦沢も同行させてよろしいですか?」
ちょっとギョッとした。
確かに、啓也くんの教育と管理も原さんが目を光らせてくれてるんだけど……
「もちろんいいんだけど……啓也くんがさやか嬢の毒牙にかからないように、気をつけてやってくれるかな?」
そう言ったら、原さんは意味ありげに笑った。
多少さやか嬢の身が心配になったけど、まあ、大丈夫だろ。
彼女も修羅場はくぐってきてるよな。
うん。
原さんの指示で、金曜日の夜に関係者が集った。
さやか嬢と、彼女の元彼らしき若い弁護士、それから30代半ばぐらいの柄の悪そうな男。
うちからは堀正美嬢、原さん、啓也くんと俺。
店に入る時は肩で風を切っていた柄の悪そうな男が、原さんを見て面白いぐらいおとなしくなった。
「原さんって、何者?」
形式的な会食の後、俺の車で正美嬢と啓也くんを送って行った。
「うーん。一言ではとても言えんけど、まあ、インテリやくざ?」
正美嬢の質問にそうお茶を濁そうとしたけれど、
「原さんも施設で育った時期があらはるんですよね?」
と、既に調べてるらしく、確認されてしまった。
「うん。だから、希和にも啓也くんにも、偏見なく親身に接してくれてるんやと思うわ。」
なるべく話題を核心から逸らそうとしたけれど
「……正直、優しいんか厳しいんかよくわからんヒトです、原さん。とりあえず、怖い。」
と、啓也くんが言った。