夢が醒めなくて
「ところで照美ちゃんの姿が見えへんのですけど……」
やくざの話なんか聞いたら、何だか心配になってきた。
キョロキョロしてると、義人氏が指さした。
「あそこ。寝てしもたみたい。」
確かに、柱に完全に体重を預けきって、照美ちゃんは爆睡していた。
「こんなとこでうたた寝して風邪ひかへんかな。照美ちゃん。」
席を立って、起こしに行った。
「あー、希和ちゃん。帰るの?」
目覚めるなりそう言った照美ちゃんに苦笑した。
「ごめんね。照美ちゃん、つまんなかった?もう、帰りたい?」
まだ小一時間しかたってない。
本当は、門限ギリギリまでここにいたい。
でも、寝てしまうほど退屈してる照美ちゃんをこれ以上付き合わせるのは申し訳ない気がした。
「じゃあさ、映画でも観てるか?おいで、照美ちゃん。希和子ちゃんは、ここで続き、読んで待っときぃ。」
義人氏はそう言って、照美ちゃんを伴ってエレベーターに乗った。
上の階では、インターネットもできるし、映画を観たり、音楽を聞くこともできるらしい。
しばらくすると、義人氏が独りで戻ってきた。
「照美ちゃん、2時間半の映画観るねんて。せやし、希和子ちゃんは予定通り、門限ぎりぎりまでゆっくり読書できるで。」
義人氏は笑顔でそう言った。
反射的に、ほうっと、大きく息をついた。
「ここなら息苦しくないんやろ?」
義人氏はからかうような口調でそう言ったけれど、全然からかってなんかなかった。
息苦しいと私が言ったから、なるべく楽になれる場所へ連れてきてくれてるのだろう。
胸がいっぱいになって、うまくお礼の言葉がでてこない。
ただ私はうなずくことしかできなかった。
下心なく、誰に対しても、こんな風に優しく出来るヒトなんだろうな。
……美幸ちゃんや照美ちゃんみたいに、舞い上がることも異性として憧れることもないけれど、ヒトとしてうらやましい気がした。
その後も、私は端末を検索しては、興味の赴くままに古い本を請求して読ませてもらった。
義人氏は義人氏で、けっこう真剣に頁をめくっている。
……私を連れてくる義務感だけじゃなく、義人氏自身も用事があったのかと、何となくホッとした。
さらに義人氏は古い「人事興信録」を請求して、積み上げて運んできた!
これって、いわゆる紳士録のはず。
……やくざも紳士録に掲載されてるのかな。
何となく気になったので、義人氏がトイレに立った隙に最新っぽい本を見せてもらった。
んーと……義人氏は、竹原義人。
た……け、はら……。
これ?
京都市在住の会社経営者に、竹原要人というヒトがいる。
名前から察するに親子っぽい?
会社名を見ると、私でも知ってるような大会社で、ギョッとした。
さすがにこれは違うか。
私は本を閉じて、自分の席に戻った。
やくざの話なんか聞いたら、何だか心配になってきた。
キョロキョロしてると、義人氏が指さした。
「あそこ。寝てしもたみたい。」
確かに、柱に完全に体重を預けきって、照美ちゃんは爆睡していた。
「こんなとこでうたた寝して風邪ひかへんかな。照美ちゃん。」
席を立って、起こしに行った。
「あー、希和ちゃん。帰るの?」
目覚めるなりそう言った照美ちゃんに苦笑した。
「ごめんね。照美ちゃん、つまんなかった?もう、帰りたい?」
まだ小一時間しかたってない。
本当は、門限ギリギリまでここにいたい。
でも、寝てしまうほど退屈してる照美ちゃんをこれ以上付き合わせるのは申し訳ない気がした。
「じゃあさ、映画でも観てるか?おいで、照美ちゃん。希和子ちゃんは、ここで続き、読んで待っときぃ。」
義人氏はそう言って、照美ちゃんを伴ってエレベーターに乗った。
上の階では、インターネットもできるし、映画を観たり、音楽を聞くこともできるらしい。
しばらくすると、義人氏が独りで戻ってきた。
「照美ちゃん、2時間半の映画観るねんて。せやし、希和子ちゃんは予定通り、門限ぎりぎりまでゆっくり読書できるで。」
義人氏は笑顔でそう言った。
反射的に、ほうっと、大きく息をついた。
「ここなら息苦しくないんやろ?」
義人氏はからかうような口調でそう言ったけれど、全然からかってなんかなかった。
息苦しいと私が言ったから、なるべく楽になれる場所へ連れてきてくれてるのだろう。
胸がいっぱいになって、うまくお礼の言葉がでてこない。
ただ私はうなずくことしかできなかった。
下心なく、誰に対しても、こんな風に優しく出来るヒトなんだろうな。
……美幸ちゃんや照美ちゃんみたいに、舞い上がることも異性として憧れることもないけれど、ヒトとしてうらやましい気がした。
その後も、私は端末を検索しては、興味の赴くままに古い本を請求して読ませてもらった。
義人氏は義人氏で、けっこう真剣に頁をめくっている。
……私を連れてくる義務感だけじゃなく、義人氏自身も用事があったのかと、何となくホッとした。
さらに義人氏は古い「人事興信録」を請求して、積み上げて運んできた!
これって、いわゆる紳士録のはず。
……やくざも紳士録に掲載されてるのかな。
何となく気になったので、義人氏がトイレに立った隙に最新っぽい本を見せてもらった。
んーと……義人氏は、竹原義人。
た……け、はら……。
これ?
京都市在住の会社経営者に、竹原要人というヒトがいる。
名前から察するに親子っぽい?
会社名を見ると、私でも知ってるような大会社で、ギョッとした。
さすがにこれは違うか。
私は本を閉じて、自分の席に戻った。