夢が醒めなくて
「美幸ちゃん!」
考えないようにしてたことを指摘されて、私はたぶん真っ赤になったと思う。
「だって、あのヒトやしなあ。まあでも、もし希和ちゃんに他に好きなヒトができたら、無理強いするヒトにも見えへんのよね。せやし、希和ちゃん!嫌なもんは嫌って、ちゃんと言えるようになりな。」
美幸ちゃんの言う通りだ。
要は、私がしっかりしていればいいのだ。
頭ではわかっているのだけれど……逆に、あんなヒトがそばにいたら、他の男の子を好きになることができるだろうか。
義人氏に流されるのは確定事項のような気がしてならない。
「若紫に、光源氏を拒絶して生きてく道なんか、あるのかな。」
そう呟いたけど、源氏物語を知らないらしく、美幸ちゃんはスルーした。
「美幸ちゃんは?啓也くんと、話した?」
ちょっと気になってたので、聞いてみた。
「うん。まあ。昨日一緒にプール行った。」
プール?
2人だけで?
それって……
「……した?」
そう尋ねると、美幸ちゃんは艶然と笑った。
そっか。
2人は、そういう関係になったんだ。
前に美幸ちゃんが言ってた。
落としたい男ができたら、一緒にプールに行く、って。
水の中で過剰なボディタッチをしてその気にさせて……シャワールームで、って。
うーん、2人ともよく知ってるだけに、生々しい。
「でも、その後、あいつ、口聞いてくれへんねん。やり逃げされた気分。」
やり逃げ、って!
何か言いたかったけど、美幸ちゃんがけっこうマジに落ち込んでるっぽかったので、それ以上何も言えなかった。
夕食の時、先生が美幸ちゃんにはなむけの言葉を贈った。
「正しい道を歩んでね。大人の言うことはよく聞いて。でも、大人に利用されないように、自分で考えて、後悔しないように生きてね。」
ああ、先生達も、美幸ちゃんの道は険しいと思ってるんだな。
本当なら、引き留めたいのかもしれない。
でも、本人だけじゃなく、美幸ちゃんのママまでが乗り気だから、誰も止められないのだろう。
美幸ちゃんは、別れの言葉をどう聞いたのだろう。
啓也くんがずっと拳を握っているのを、私はぼんやりと見ていた。
食後に、パソコンをいじっている啓也くんのところに行った。
「さっき、咳してたけど、大丈夫か?」
「うん。むせただけ。お見舞い来てくれてんてね。ありがとう。検索したいんやけど、パソコン、いい?」
考えないようにしてたことを指摘されて、私はたぶん真っ赤になったと思う。
「だって、あのヒトやしなあ。まあでも、もし希和ちゃんに他に好きなヒトができたら、無理強いするヒトにも見えへんのよね。せやし、希和ちゃん!嫌なもんは嫌って、ちゃんと言えるようになりな。」
美幸ちゃんの言う通りだ。
要は、私がしっかりしていればいいのだ。
頭ではわかっているのだけれど……逆に、あんなヒトがそばにいたら、他の男の子を好きになることができるだろうか。
義人氏に流されるのは確定事項のような気がしてならない。
「若紫に、光源氏を拒絶して生きてく道なんか、あるのかな。」
そう呟いたけど、源氏物語を知らないらしく、美幸ちゃんはスルーした。
「美幸ちゃんは?啓也くんと、話した?」
ちょっと気になってたので、聞いてみた。
「うん。まあ。昨日一緒にプール行った。」
プール?
2人だけで?
それって……
「……した?」
そう尋ねると、美幸ちゃんは艶然と笑った。
そっか。
2人は、そういう関係になったんだ。
前に美幸ちゃんが言ってた。
落としたい男ができたら、一緒にプールに行く、って。
水の中で過剰なボディタッチをしてその気にさせて……シャワールームで、って。
うーん、2人ともよく知ってるだけに、生々しい。
「でも、その後、あいつ、口聞いてくれへんねん。やり逃げされた気分。」
やり逃げ、って!
何か言いたかったけど、美幸ちゃんがけっこうマジに落ち込んでるっぽかったので、それ以上何も言えなかった。
夕食の時、先生が美幸ちゃんにはなむけの言葉を贈った。
「正しい道を歩んでね。大人の言うことはよく聞いて。でも、大人に利用されないように、自分で考えて、後悔しないように生きてね。」
ああ、先生達も、美幸ちゃんの道は険しいと思ってるんだな。
本当なら、引き留めたいのかもしれない。
でも、本人だけじゃなく、美幸ちゃんのママまでが乗り気だから、誰も止められないのだろう。
美幸ちゃんは、別れの言葉をどう聞いたのだろう。
啓也くんがずっと拳を握っているのを、私はぼんやりと見ていた。
食後に、パソコンをいじっている啓也くんのところに行った。
「さっき、咳してたけど、大丈夫か?」
「うん。むせただけ。お見舞い来てくれてんてね。ありがとう。検索したいんやけど、パソコン、いい?」