夢が醒めなくて
「で、結局、また君か。きわちゃん?5年生?パシり?」
代表で降りてきた「きわちゃん」は、終始無表情だった。
「6年生です。別に、虐められてるわけじゃありませんから。私が一番、先生達に目を付けられてないから。」
それだけ言って、きわちゃんは口を閉じた。
よくわからないけど、おとなしい優等生ってことか?
「きわちゃん、珍しい名前やね。どんな字を書くん?」
「薄める、希釈のき、平和のわ、子供のこ、で、希和子です。」
……希望のき、と言わないことが、逆に妙に新鮮に感じた。
「きれいな名前やね。アウグスチン・シュタウブの、」
「希和辞典?よく知ってはりますね?」
俺の言葉を遮るぐらい、希和子ちゃんは驚いたらしい。
その目がキラキラしていた。
……かわいい。
てか、逆に、小学生がギリシア語辞典の編者なんか知ってることのほうが、すごいと思うんだけど。
「IDEA(イデア)というグループの歌詞からプラトンに興味を持ったのがきっかけでギリシア語の辞典を見つけました。」
コンビニでスナック菓子の袋を抱えながら、希和子ちゃんはそう言った。
……IDEAね。
俺も好きで車でよく聞いてるけど、IDEAとは浅からぬ縁もある。
「一条さん、プラトン好きみたいやもんな。希和子ちゃんは一条さんのファン?」
そう聞くと、希和子ちゃんは首を傾げた。
「一条さんって、歌ってはるヒト?IDEAの名付け親は、メンバーが学生時代に下宿していたマンションの大家さんやと聞きました。哲学の教授って。」
希和子ちゃんは、人気グループIDEAのリーダーの一条 暎(はゆる)さんを知らないのか。
驚いて、希和子ちゃんをマジマジと見た。
一条さんは1人でCMに出るほど人気もあるのに……あ!そうか。
「もしかして、テレビ見ない?」
もちろん施設にもテレビはある。
でもわざわざ強制的に見せることはないから、興味がない児童は全く見ないのかもしれない。
希和子ちゃんは、黙ってうなずいてから、
「変ですか?」
と聞いた。
「いや。最近、いい番組も減ったと思うし、無理に見る必要もないと思う。読書や勉強したほうが有意義やと思うわ。」
件(くだん)の一条さんと付き合ってる知織(しおり)ちゃんも家にテレビがなかったとかで、一条さんと偶然出逢うまでまったく知らなかったし。
ちなみに俺は、録画した番組を3倍速で視ている。
滑舌の悪い俳優や、くそ面白くないバラエティは全く記憶に残らないけど。
「はい。レベルの低い番組に時間を取られるぐらいなら、本を読みたいです。」
真面目にそう言った希和子ちゃんに、俺の頬が緩んだ。
代表で降りてきた「きわちゃん」は、終始無表情だった。
「6年生です。別に、虐められてるわけじゃありませんから。私が一番、先生達に目を付けられてないから。」
それだけ言って、きわちゃんは口を閉じた。
よくわからないけど、おとなしい優等生ってことか?
「きわちゃん、珍しい名前やね。どんな字を書くん?」
「薄める、希釈のき、平和のわ、子供のこ、で、希和子です。」
……希望のき、と言わないことが、逆に妙に新鮮に感じた。
「きれいな名前やね。アウグスチン・シュタウブの、」
「希和辞典?よく知ってはりますね?」
俺の言葉を遮るぐらい、希和子ちゃんは驚いたらしい。
その目がキラキラしていた。
……かわいい。
てか、逆に、小学生がギリシア語辞典の編者なんか知ってることのほうが、すごいと思うんだけど。
「IDEA(イデア)というグループの歌詞からプラトンに興味を持ったのがきっかけでギリシア語の辞典を見つけました。」
コンビニでスナック菓子の袋を抱えながら、希和子ちゃんはそう言った。
……IDEAね。
俺も好きで車でよく聞いてるけど、IDEAとは浅からぬ縁もある。
「一条さん、プラトン好きみたいやもんな。希和子ちゃんは一条さんのファン?」
そう聞くと、希和子ちゃんは首を傾げた。
「一条さんって、歌ってはるヒト?IDEAの名付け親は、メンバーが学生時代に下宿していたマンションの大家さんやと聞きました。哲学の教授って。」
希和子ちゃんは、人気グループIDEAのリーダーの一条 暎(はゆる)さんを知らないのか。
驚いて、希和子ちゃんをマジマジと見た。
一条さんは1人でCMに出るほど人気もあるのに……あ!そうか。
「もしかして、テレビ見ない?」
もちろん施設にもテレビはある。
でもわざわざ強制的に見せることはないから、興味がない児童は全く見ないのかもしれない。
希和子ちゃんは、黙ってうなずいてから、
「変ですか?」
と聞いた。
「いや。最近、いい番組も減ったと思うし、無理に見る必要もないと思う。読書や勉強したほうが有意義やと思うわ。」
件(くだん)の一条さんと付き合ってる知織(しおり)ちゃんも家にテレビがなかったとかで、一条さんと偶然出逢うまでまったく知らなかったし。
ちなみに俺は、録画した番組を3倍速で視ている。
滑舌の悪い俳優や、くそ面白くないバラエティは全く記憶に残らないけど。
「はい。レベルの低い番組に時間を取られるぐらいなら、本を読みたいです。」
真面目にそう言った希和子ちゃんに、俺の頬が緩んだ。