さくらの檻の中で。(仮)
いつも控えめに
オドオドとしている橘さんの
こんな顔見るの、はじめてだ…
「おーい、櫻井たち
いけるかー?」
先生が遠くで呼んでいる。
「い、いけます!」
そう返事をするのは
隣にいる橘さん。
どうやら
だいぶ自信になったみたいで。
「よーーい…」
ーーパンッ
フライングすることなく
スタート練習が出来るように
なったんだ。
「あ、っ、あのっ、」
「…ん?」
「ありがとう…!」
……あたしなんかに
お礼言うことないのに。
言われ慣れていないあたしは
少し、照れてしまう。
「いや…別に…」
なんか…調子、狂うなぁ。
嫌いなはずの陸上競技なのに
普通に教えられちゃったし…
どうかしてるんだ、きっと。
あたしも体育祭の熱に
やられてきたかな…?