朱色の悪魔
知らされた頃には、全部手遅れになっていた。
1週間前、学校から戻って来たとき、もう朱音の姿はなかった。
抗争の前のように険しい顔をした神哉兄貴と親父に問い詰めて、やっと今回の計画を知った。
朱音が囮で潜入すること、1週間後襲撃をかけること。
朱音を連れ戻そうにも、居場所は誰にも分からない。当然のようにスマホは朱音の部屋に放置されていて、誰も朱音の安否を確かめる術を持っていなかった。
1週間が過ぎ、計画通り襲撃をかける。
同時に朱音は組長以下、側近13名を仕留め、若頭の拘束に成功。
兄貴が組長の元にたどり着いたときにはすべてが終わっていたらしい。
だが、朱音は全身に十数発の銃弾を受け、大量出血で一時は心肺停止状態になった。
留榎兄さんが何とか持ちこたえさせたけど、朱音は今も生死をさ迷っている。
分かってる。
今回の計画は朱音なしにはなし得なかったこと。
枦が存続し続ける以上、一般人に被害が広がっていくことは避けられなかったこと。
だけど、その犠牲に朱音がなる必要なんかあるわけねぇだろ…。