朱色の悪魔
4.昔のお話
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「…っは」
目を覚ました時には外は真っ暗だ。
…まさか、いや、そんなはずは…。かっと顔が赤くなったのは自覚した。
それは、一線を越えたという意味ももちろんあったし、目の前に弟くんの顔があったという理由てもあったし、でも、やっぱりお互いに一糸まとっていないというのが大打撃だったと思う。
次に思考が飛んだのは、弟くんは、女を攻めることに慣れているのだろうかということだった。
とりあえず、弟くんは今まで抱かれた中でもあり得ないくらい思考を溶かされた。
もちろん、薬とか使われていない中ではトップだ。
今動けないのは、なにも口にしていない上に薬すら口にしていないから。もちろんそれはそうだが、少なくとも薬を飲んでいたとしても動けなかっただろう。
足が動かない。というより、笑ってる気がする。力が入らないし、異様に腰は痛い。
こんなとき、いつもなら殺意しか湧いてこないが、それがないのは弟くんだからだろう。
…いや、正直に白状しよう。
好きな人に抱かれて嬉しくないはずがないのだ。無論、それは私も同じ。特に今まで禁忌として自分を諌めていたのだから当たり前だ。
華月朱音は、華月魁のことを好いている。
それは、紛れもない事実なのだから。
そして、“朱音”を求める魁とこの思いは一致している。だから、今この幸福感に満たされているんだ。
…だが、忘れるな。
私は、幸せになってはいけない。華月朱音は、幸せであってならない。
私は、華月の家族にとってかけがえのないものを壊してしまったのだから。