朱色の悪魔
その後の経緯については、私は詳しくは知らない。
だけど、何かの確認のために建物に入った神哉兄さんが倒れた私を見つけ、回収した。
そして、留榎兄さんと掛け合ったのだろう。
目が覚めたとき、私は実に6年ぶりとなる華月組の本家にいて、これまた6年ぶりの再会となった魁に看病されていた。
目が覚めたとき、真っ先に都合のいい夢だと思った。だけど、それは夢なんかじゃなかった。
「朱音、おかえり」
「……」
おかえりと迎えてくれた手はあまりにも温かくて、忘れていた何かを思い出したような気になった。
そして、私は、やっぱりバカだった。
「…っ…う、うわぁぁぁん!!」
「…もう、どっか行くなよ」
バカみたいに魁に泣きついて、目が覚める度にそれを何回も繰り返した。
起きて、泣いて、疲れて寝て、の繰り返し。
魁は飽きもせず付き合ってくれて、私がなく度に背を撫でてくれた。
そして、しばらく経って私は、また華月朱音に戻り、家族にいれてもらえた。
留榎兄さんには気まずかったけど、留榎兄さんの方から謝られて、朱色の悪魔の対処を真剣に調べ始めたらしい。
でも、私は、壁を作ることにした。
優しくされて嬉しくないわけがない。家族が好きでないはずがない。
だけど、私が母を殺したことは間違いのない事実だ。そして、私が兵器であるという事実も。
もし、もしまた私が家族の誰かを殺してしまったら、容赦なく彼らが私を切れるように。
そのための壁を。
そんなことをいって本当は私が怖いだけだ。取り返しのつかなくなった時、私がこれ以上傷つかないための壁だ。
それが、私が誰の名前を口にしない理由だ。