朱色の悪魔
無様に転がったまま朱音に手を伸ばす。
頬に触れた。氷みたいだった。
肘をついて近くに寄って、その体を抱き締めた。
「つめてぇ…」
なに、やってたんだろ。俺…。
ずっと側にいたのに、毎日会っていたのに、なんで、気づいてやれなかったんだろ…。
「…か、い…」
「…朱音?」
目は閉じたままうわ言のように名前を呼び続ける。
「朱音、ここにいるから…」
きつく抱き締めることしか出来なくて、何度も呼ばれてるのに気付かれない。
それが辛くて、痛いくらいに抱き締め続けた。