朱色の悪魔

「魁、はよ。どーしたよ!テンション低いな!」

「うるせぇ」

バカみたいにテンション高いこいつ。大和は結局、あれからもまとわり付かれてる。

適当に無視して教室に入る。

誰も話しかけてこないし、こっちからも話しかけない。

相変わらず大和だけが俺の回りでうるさいだけ。

ひたすら無視を続けて、先生が来るのを待つ。

鳴り響いたチャイム。始まる1日が酷く憂鬱だった。

ぼんやりしている間に終わっていく授業。合間に懲りずにやって来る大和。

それを繰り返して、知らない間に終わった学校。

しはらく、動けなかった。

「…あー。魁、俺帰るな」

大和さえ、ずいぶん前に教室を出た。夕日が差し込んで来て、先生の見回りで教室から追い出されるまでそこにいた。

酷く遅い歩みで駅に向かう。

帰ったら朱音は、施設に行く。

俺が帰ったら、朱音は、あそこからいなくなる。
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