朱色の悪魔
同じことばかりが頭を駆け巡っていく。
駅に向かう足も重い。帰りたいのに、帰りたくない。その繰り返しばかりだ。
横付けするように車が止まる。顔を何気なくそちらに向けて、急激に我に返る。
黒スーツのいかにもって奴らが降りてきて、取り囲まれる。
こいつら、華月のもんじゃねぇ…。
「華月魁だな」
「…お前ら、どこのもんだ」
華月にケンカ売る意味、分かってんだよな…。
回りを取り囲むのは10人。どっか突破して逃げるのが、無難か。
「…やれ」
名前を訪ねてきた奴の合図で一斉に動き出す。
…正面。
踏み出して後ろからの攻撃を遅らせる。その分迫った正面の奴を殴り付ける。
続いて手を伸ばした奴の手を逆手に取りに、捻りあげて肩を外す。
正面に空いた空間を無理矢理突き抜けて走り出す。
「待てッ!!」
決まり文句が聞こえてくる。もちろん無視。
証拠ねぇけど、まぁすぐ分かんだろ。
とにかくこのまま逃げるしかねぇ。