朱色の悪魔
沈黙が落ちる。
イライラを隠せない神哉兄貴が放つ気迫が、この部屋の空気を重くさせる。
短くなったタバコが灰皿に押し付けられた。
「…探さなくてもいいんじゃねぇの?」
突如、口を開いたのは由羅兄貴だった。
朱音を見捨てるかのような発言に神哉兄貴も、親父も目を見開く。留榎兄さんは目を閉じたまま微動だにしない。
…そう言えば、いろいろあったせいですっかり吹き飛んでたけど、俺があいつらに捕まったそもそもの理由は…。
それを思い出した瞬間、神哉兄貴が口を開く前に由羅兄貴の胸ぐらを掴んだ。
そもそも、由羅兄貴が俺をあいつらに引き渡すようなことしなければ、こんなことには…。
「魁、服が伸びんだろ?」
俺の怒りを知ってか知らずか、由羅兄貴は飄々とそんなことを言う。
その瞬間、頭の中で何かがキレた。
「っなんであいつらに協力するような真似しやがったんだ!!由羅兄貴のせいで、朱音が…!!」
「なんだと!?」
「答えろよ!」
由羅兄貴は大袈裟にため息をつく。そして、面倒くさいとでも言うかのようにうんざりした顔をした。