朱色の悪魔
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無機質な電子音が鳴り響く。
ぼんやりと目を覚ました世界は、きれいに色づいている。
「…」
視線だけを動かして、無機質な音を出す時計を見る。
AM6:00。起きなくちゃ…。
「おーい。朱音ー起きろー?」
襖の向こうから聞こえてくる声。
布団から出て、2回じゃばら折りに畳んで部屋の隅に追いやる。
壁にかかったセーラー服に手を伸ばしかけて、その隣にかかるブレザーに手を伸ばす。
新品のそれに腕を通して、いつも裏を向いてる姿見をくるりと回転させて自分を写す。
灰色ベースのチェック柄のスカート。
白のカッターに、紺色のブレザー。リボンはない。
つまらなさそうな顔をしてる。
寝癖のついたままの髪はあちこちに跳ねているのに、顔にかかった髪だけは、左目を決して鏡には写さない。
髪に隠れた左目を覆うように手で触れる。
―熱い。
手を下ろし、机の傍に置いてあるスクールバックに手を伸ばす。
外からの声が近い。