朱色の悪魔
いつもと同じように放り込まれた部屋。
また、始まるだけだ。
「…朱…音?」
一瞬反応が遅れる。
嘘だ。これは都合のいい幻覚だ。
目の前にいるのが、魁に見えてしまうなんて、私の頭はとうとうイカれたらしい。
でも、それでいいのかもしれない。最期に夢くらい見たっていいじゃんか。
このまま夢に浸ってしまおう。せめて、この時だけは…。
「朱音」
「…ッ!?」
ほっぺ、つねられた。顔を上げれば意地悪な顔。…ゆ、夢にしては妙にリアル。
「夢じゃないからな」
「え?」
「…大声出すなよ?」
ひょいと抱き上げられてベッドにぽいっとされる。自然に乗ってきた魁は、顔を首筋に埋める。
「朱音、助けに来る」
「だからもう少しだけ踏ん張れ。計画実行は5日後だ」
耳元で聞こえてくる魁の声は暖かくて、勝手に涙が浮かぶ。
それを魁は自然な動作でなだめてくれる。