朱色の悪魔
計画実行は5日後。合図として、建物の入り口を吹き飛ばす。
こっそり渡されたのは薬と仕込み針が入った耳栓。
魁は動きを止めないながらも、作戦を教えてくれる。
「朱音、先走るなよ。一緒に帰るんだ」
「…うん」
頭を撫でられる。
今度は私の番だ。
「研究者は全員で6人。突き当たりのドアから左に2つ目の扉に捕らえられてる人がいる。詳細な人数はわからない」
口許が見えないようにだろうけど、魁の顔が目の前にあるから少し落ち着かない。
話が区切れる度に落とされるキスに溺れそうになるのを堪えた。
「子どももいるの。12年前の実験体の生き残りの家族がまとめて拐われているみたい」
「力抜け」
「全員首に枷がつけられてる。食事もまともにとってないから倒れる人がいるかもしれない」
頭を魁の腕にくっつける。情報はおしまいの合図。
視線が重なる。甘く微笑んだ魁に翻弄させるのはいつものこと。
こんな場所じゃなかったらよかったのにな…。