朱色の悪魔
8.さようなら
1
「っな、なんだ!?」
「すぐに避難するのよ!!」
煙が足元を覆い、警鐘器が鳴り響く廊下。
研究者は2人。あと3人と、あいつの姿はない。
研究者2人は、この通路の奥。つまり、実験室の方向へ走り出す。
逃げることしか頭にない奴らは私の存在なんか気づいてもいない。ならば、好都合だ。
耳に押し込んであった仕込み針入りの耳栓をはずし、針で左の手のひらを裂く。溢れた赤が左手を染め上げるのを待たずに研究者2人を追って駆け出す。
後ろを走っていた研究者が振り返る。その瞬間、その無防備な腕を左手で掴んだ。
「ッ!?おま…ッ!!?ひっ…ぎゃぁああ!!!?」
絶叫を上げながら崩れ落ちる。そのまま息を止めた研究者は無惨に廊下へその身を横たえる。
先を行く研究者は倒れた奴の声に驚いて振り返り、私を見るなり表情を凍りつかせた。
声を上げられる前に詰め寄り、手を掴む。
悲鳴を上げられかけた瞬間、足を払い床に押さえつけ、左手で口を塞ぐ。
すぐに動かなくなった研究者の体の上から退く。
まずは2人、完了。
あと4人…。