朱色の悪魔

だが、カチャリと音を立てた。

華月神哉が構えるのは、拳銃。照準に向けられているのは、研究者だ。

研究者は焦る。人質がいるのに、銃口を向けられた。

「っやめろ…やめろ!!!殺すぞ!!本当に、殺すぞ!!!!!」

「っぁ…………………」

手加減などなくし、少女の首を絞める。少女の瞳から涙が一粒、こぼれ落ちていく。

だが、それは一瞬で打ち砕かれる。

研究者を襲ったのは、腰への激しい衝撃。振り返る間もなく研究者は弾き飛ばされる。

腕にいたはずの人質は、いつのまにかそこにいた華月留榎に保護されている。

「っげほっげほっはぁ、はぁ…………」

「朱音、しっかり」

「朱音!!」

そこへ、魁も駆け寄り、少女を抱き締める。

呆然とそこで無様に転がる研究者は、不意に目の前が陰ったことに気づき顔を上げる。

彼の前に立ちはばかるのは、華月組、組長とその若頭。

「終わりだ」

研究者の希望を絶つように告げられるのは終結の言葉だった。

客観視END
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