朱色の悪魔

魁side

「朱音…」

何でだよ。何で、あとちょっと待つことくらい出来ないんだよ。

バカだろ…お前は。

青白い顔で、微かに息を繰り返す朱音の体はボロボロで、あちこちから滲み出る血が妙に色艶やかに見える。

「魁、血に触っちゃダメだよ」

「分かってる」

「…別に、死にやしないさ」

不意に話に割り込んできた声は研究者のもの。

研究者は親父と神哉兄貴が目の前にいるのにも関わらず、こちらをどこか落胆したような顔で見ていた。

「朱はもう朱じゃない。僕が壊した」

「どういうことだ」

「っだから、それはもう朱色の悪魔なんかじゃないって言ってるんだ!!今はただの死にかけだ」

「ってめぇ」

「魁、やめろ。朱音の傷にさわる」

留榎兄さんに肩を掴まれる。苛立ちを押さえるように研究者から朱音に視線をおとす。

留榎兄さんが朱音の手からしたる血を試験管で受け、何かの薬品を入れる。

しばらくして、留榎兄さんは驚いたように朱音を見下ろした。
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