朱色の悪魔
「戯れ言は終わったか?…何が有益だ。罪もない命をいくつも消し去ったお前が、簡単に死ねることを感謝しろ。俺たちの怒りに触れた時点で、てめぇの命は終わってんだよ」
「ッ!!」
トリガーにかけられる指が、力を増していく。
その様子を、死を前にした研究者は恐怖に満ちた顔で凝視する。
華月の誰も動かなかった。全員が、世界を震撼させる兵器を生み出した研究者の最期を見つめていた。
「…っか、い…………」
「ッ!?…朱音」
掠れた声は、静かな空間に思いの外響く。
目を覚ました朱音はひどく疲れた顔をして、俺をじっと見つめている。
その視線が俺から外れ、視線がさ迷う。そして、その視線はまっすぐ、研究者に向けられた。
その目に宿るのは、闘志。
「っ朱音!動くんじゃねぇ!!」
「…ッ」
危うく落としそうになった朱音を抱き直す。だけど、朱音の目は研究者を射貫いて離さない。
お前は、そこまでしてあいつとの蹴りをつけたいのか…。
……なら、俺は…。
「留榎兄さん、朱音を頼む」
「魁?」
「…神哉兄貴、俺にやらせてくれ」
全員の視線を受ける。
神哉兄貴は、眉を潜め、俺を睨む。